- 2026/02/16 掲載
日本のメガバンには無理か……欧銀サンタンデールが9週間で2兆円の超大型買収のワケ(2/2)
日本の大手行が大型M&Aに踏み切れない壁
仮に日本の大手銀行が、米国で総資産約840億ドルの地域銀行を約123億ドルで買収する案件に直面した場合、最大の壁は資金ではなく意思決定の設計にある。サンタンデールの取引条件は、現金と株式を組み合わせ、プレミアム14%を提示した上で、コストシナジー8億ドル、実質株価収益率6.8倍という前提を置いた。これらは統合が順調に進まなければ崩れやすい数字でもある。
クロスボーダーの銀行買収では、対象資産の精査に加え、統合後の統制やリスク管理の示し方が問われる。マネーロンダリング対策、消費者保護、IT統合、金利変動への耐性など、承認までに整理すべき論点は多い。
一方、日本の大手銀行では、稟議やリスク・コンプライアンス審査、海外子会社の統治、投資家向け説明まで、判断が部門をまたいで積み上がる。買収価格を正当化するためには、シナジーの根拠と実行計画を同時に示さなければならない。
さらに、買収後の初年度にどの程度の費用が先行し、いつ黒字化するのかという工程表も求められる。9週間で決めるには、論点を並列で処理し、最終的に誰が責任を負うのかを明確にする必要がある。
日本企業のM&Aでは、失敗した場合の批判が先に意識されやすく、決裁者が慎重になる傾向がある。では、サンタンデールはなぜ、わずか9週間でこの決断にたどり着けたのか。
9週間で合意に至ったプロセスの詳細
フィナンシャル・タイムズによると、サンタンデールの買収検討はプロジェクト名を付けて進められ、検討開始から9週間で合意に至ったという。取引の枠組みは両社が同時に公表している。ウェブスターの取締役会は合意を全会一致で承認し、サンタンデール側も所定の機関で承認した。短期決着の鍵は、論点を直列ではなく並列で処理し、決裁の責任線を早い段階で固定した点にある。
そのプロセスは大きく5つに分けられる。最初は案件化だ。起点は2023年のJPモルガン会議で、経営トップが米国での商業銀行拡大を優先課題に置いていたことが前提にあった。
次に価格とスキームの設計が進む。現金48.75ドルと米預託証券2.0548株を組み合わせた条件は、資本負担と株主希薄化を同時に抑える狙いがあった。
3つ目はシナジー前提の固めだ。サンタンデールはコストシナジー8億ドルを提示したが、市場はその実現性を慎重に見ていた。
4つ目は統合の受け皿づくりで、ウェブスターはジョン・シウラCEOら経営陣を評価し、統合を加速できると説明した。
最後5つ目が資本配分の同時進行である。買収と同日に50億ユーロの自社株買いを公表し、成長投資と還元をセットで示した。
論点を並列で整理するチェックリスト化や、統合責任者を固定する運用は取り入れやすい。一方で、最終判断の権限設計や資本配分の説明は、前提条件が異なる。9週間という数字が示すのは、スピードそのものよりも、それを可能にした設計を可視化した点にある。
サンタンデールによる122億ドルの米銀行買収は、金額の大きさ以上に、9週間という意思決定の速さが際立った。背景には、成長を最優先に据えた経営判断、論点を並列で処理する体制、責任の所在を早期に定める設計があった。
一方、日本の大手銀行は、慎重さゆえに時間を要する構造を抱える。どちらが正しいという単純な話ではないが、同じ環境変化に直面したとき、決断までにかかる時間そのものが競争力を左右しつつあることは確かだ。
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