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  • 野口悠紀雄氏:ブロックチェーンの先にある量子コンピューターの“破壊力”

  • 2019/08/15

野口悠紀雄氏:ブロックチェーンの先にある量子コンピューターの“破壊力”

FinTech Journal創刊記念インタビュー

フィンテックは銀行業界のみならず保険業界でも重要な変化を起こしていた。AIによって保険契約者の保険料や保険金をパーソナライズすることが可能になるとともに、ブロックチェーンを活用した保険により、保険会社が要らなくなり、保険金の支払いも即座に支払えるようになるという。そしてその先、量子コンピューターの普及は、我々の社会に対してブロックチェーン以上に計り知れない影響をもたらす──。野口氏は衝撃的な未来予測を披露した。

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:吉田育代

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:吉田育代


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早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
一橋大学名誉教授
野口悠紀雄氏

ブロックチェーンで保険を作れば管理は要らず、保険金支払いも迅速に

 前編でもお話をしましたが、ブロックチェーンによって、管理主体の要らない保険が可能になります。

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 たとえば、ごく小規模な人たちでグループを組んで保険を作り、その保険をブロックチェーンで管理します。そのような保険はお互いが顔見知りのグループなので、あまり悪いことはしないという自制が働きます。これによって保険料を安くしたり、あるいは保険金の支払いを多くするといったことが可能になります。

 これはP2P保険と呼ばれ、実際に自動車保険ですでに存在しています。ブロックチェーンの利用による新しいタイプの保険です。

 ブロックチェーンを応用したもう一つの保険に、パラメトリック保険といわれるものがあります。これは事故が起こったときに即座に保険料が支払われるような保険です。これまでの保険は、事故が起こってからさまざまな書類で損害額の査定していたために、保険金の支払いまでに非常に長い時間と手間が必要でした。

 事故が発生したら自動的に情報を収集するような仕組みにしておき、ブロックチェーンで管理して、いざというときには即座に行えるようにします。これもすでに始まっています。

 一例は飛行機の遅延保険です。飛行機が遅れたときに、それに対して保険金を支払うというものです。これまでも旅行保険の特約として存在していたのですが、あまり利用されていませんでした。手続きが面倒だったからです。

 しかし、ブロックチェーンを応用すれば、保険金の請求プロセスを一切なくして自動的かつ即座に払うことが可能です。このような保険もすでに提供されています。パラメトリック保険が広がれば、災害が起こったときに即座に保険の支払いが可能になるわけで、これも重要な意味を持つ大きな変化といえるでしょう。

ブロックチェーンは組織の概念を根底からくつがえす

 こうしたブロックチェーン技術の普及は、究極的には、人間による事業の管理が要らなくなるということを意味します。

 組織の管理者、経営者が、そして組織というものすら要らなくなる。ビットコインを見ればわかります。ビットコインには管理者がおらず、自動的に動いている。

 これと同じような仕組みをさまざまな事業に適用でき、たとえば先ほど申し上げたP2P保険が普及すれば保険会社が要らなくなるでしょう。ブロックチェーンは組織を不要にします。これは非常に大きな変化です。

 ただし、ブロックチェーンには2種類のものがあることを知る必要があり、それらを区別することが重要です。

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 今まで言及したブロックチェーンは、正確に言うとパブリックブロックチェーンと言われるものです。つまり、データの記録作業に誰でもが参加できるようなブロックチェーンです。

 それに対してプライベートブロックチェーンは、データの記録作業に参加するコンピューターが限定されます。つまり、管理者が存在します。メガバンクや中央銀行が運営しようとしているブロックチェーンはこちらです。

 この2つは大きく異なります。パブリックブロックチェーンを支えているのが「Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク)」という技術で、書き換えや改ざんが行えなくなる仕組みのことです。

 今申し上げたブロックチェーンの利用が進めば組織が要らなくなるというのは、パブリックブロックチェーンについてのことです。これが変化の本命で、組織が不要になるというのは、パブリックブロックチェーンが用いられる場合です。

【次ページ】量子コンピューターはブロックチェーンも無力化するのか

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