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- 2020/04/17 掲載
なぜフィンテック企業は中小企業への融資を積極的に行えるのか?そのカラクリ
加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。
政府のコロナ対応の全体像とは
今回の新型コロナの感染拡大では、外出の自粛要請などによって小規模の事業者が大打撃を受けており、政府はこうした事業者に対していくつかの資金繰り支援策を提示している。すでに存在しているセーフティネット保証(経営の安定に支障を来している中小企業に対して、信用保証協会を通じて、保証限度額の別枠化を行う制度)の4号(突発的災害〈自然災害等〉)、5号(業況の悪化している業種〈全国的〉)に加え、政府はさらに大規模な危機に対応する危機関連保証制度を発動し、金融機関から資金がスムーズに提供される環境を整えたほか、日本政策金融公庫など政府系金融機関を活用した5,000億円の規模の特別貸付けも新設した。
特別貸付枠の制度は運転資金や設備資金を無担保で提供するというもので、売上高の減少率が高い事業者に対しては、特別利子補給制度を併用することで実質的に無利子化している。
加えて、商工会議所などから経営指導を受けている事業者を対象とした支援策である「小規模事業者経営改善資金融資(マル経融資)」や、生活衛生同業組合からの指導を受けている事業者に適用される「生活衛生改善貸付」も拡充した。
政府の支援策の効果を検証、金額は十分か?
資金繰り支援策の総額は1兆6,000億円に上るが、これによって企業の資金繰りは改善するのだろうか。支援策の有効性を分析する上で、全国の中小企業の財務データから筆者が試算してみると、資本金1,000万円から2,000万円の中小企業全体の売上高が2割減った場合、毎月5,000億円程度の赤字が発生する計算になる。銀行からの借り入れがリスケジュールされなかった場合、毎月4,000億円程度の返済も継続するため、1カ月あたり合計約1兆円弱の資金が必要となる。この試算には1,000万円以下の零細企業は含まれていないが、1兆6,000億円という金額はかなり現実的な水準といって良いだろう。
こうした融資が実行されれば、当座の資金繰りは何とかなるかもしれない。だが最大の問題は融資実行までの時間である。
これはケースバイケースなので一概に言えないものの、場合によっては審査や手続きに1カ月近くかかる可能性もある。政府の支援措置を受けることができたとしても、融資実行までの間の資金繰りについては基本的に自力で対処するしかないのだ。そこで注目を集めているのが、フィンテックを活用したAI融資である。
【次ページ】フィンテック企業なら、最短何日で融資できるのか
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