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  • 2022/07/05 掲載

ステーブルコインの移転上限は100万円? 業界団体と有識者による「意見衝突」の詳細

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ステーブルコインなどの規制枠組みについて議論し、将来的な法整備の方向性を決定づける金融庁の「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」。6月20日に開かれた会合では、事務局の金融庁側が、海外で発行されたステーブルコインの国内取引を認める際の要件を提示しました。これに対してFintech協会と日本暗号資産取引業協会は過度なルール強化に反発。両業界団体と、ステーブルコイン普及の意義そのものに懐疑的な考えを持つ一部の有識者メンバーの間にも意見の衝突がみられました。激論が交わされた会合の模様を伝えます。
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ステーブルコインを巡って議論が行われた金融庁
(写真:筆者撮影)

事務局側が新たに3要件を提示

 会合に先立つ6月3日にパーミッション型ステーブルコインについて、仲介業者に登録制を敷き、発行者を銀行や信託銀行、資金移動業者に限定する改正資金決済法が成立しました。


 テラUSDの価格急落やテザー疑惑による国際的な規制強化機運の高まり、そしてロシアへの経済制裁に伴う海外送金の監視強化を受けてさらなるルール強化が進めば、「国内でのビジネスが難しくなる」(フィンテック企業経営者)と懸念する声も上がっています。

 20日の会合では事務局が、海外で発行されたステーブルコイン(当局資料では「電子決済手段」)などの取り扱いについて、利用者保護の観点から次の3つの要件を設ける考えを新たに提示しました。

  1. 移転上限を設ける
  2. 発行者の破綻、価格下落などの場合に取引業者が額面での買い取りを約する
  3. 破綻時、価格下落時の買い取りを可能にする十分な資産を保全する

業界団体が「過度な締め付け」と主張のワケ

 この提案に対し、日本暗号資産取引業協会とFintech協会はそれぞれ過度な締め付けに反発する姿勢を示しました。日本暗号資産取引業協会の千野剛司氏は、「仮に(第2種資金移動業と同様の)100万円という移転上限が設けられれば、担保目的での差し入れなどユースケースについて対応が極めて難しくなる」と懸念を表明しました。

 破綻時などに買い取りを履行する資金を保全する要件については、「現状のプレイヤーを見渡すと、体力的に条件を満たすことが難しい」と説明。「新規参入が阻まれ、体力と財力のある大手金融機関等の利用に限定されれば、イノベーションの阻害につながる」と述べました。

 その上で、「これらの要件を一律に否定するわけではないが、海外のユースケースを見ると日常決済で用いられることはなく、そこまでのリスク低減を図る必要があるのか。信託制度を使って発行されているようなステーブルコインについては現地の法制で相応の利用者保護が図られており、日本にもってくる場合、事業者が過度な負担を負うことは必要か」と問題提起しました。

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新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画
(出典:内閣官房発表資料
 また、政府が6月7日に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」でフィンテック推進やブロックチェーン技術、DAO(分散型自律組織)に関する記載が盛り込まれたことを踏まえ、「ある程度、(政府の)方針に即した形で議論を行うべきではないか」と訴えました。

 Fintech協会は、海外でライセンスを取得して発行したされたステーブルコインについて「できる限り日本でも特殊な仕様変更なしに流通できる道を確保する観点で検討」することを求める意見書を提出。この中で、「発行者が海外で銀行・信託会社等としてライセンスを保有し、適格な取引業者と連携して適切に利用者保護を図れる場合等は、過度な移転上限を設定しないよう整理」をと訴えました。

【次ページ】有識者メンバーと意見が衝突

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