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  • 2022/09/27 掲載

黒田総裁任期満了間近、“課題だらけ”の日銀を誰がどのように引き継ぐのか?

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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依然として円安・ドル高の状況が続き、一時1ドル=145円まで下落した。「金融緩和が過度な円安を招いている」として、日銀への批判は止まらない。そんな中、黒田総裁の任期が残り約7カ月になったが、次期総裁人事を含め今後のシナリオはどうなるのか。黒田総裁就任後からこれまでを振り返り、次期総裁人事や「政策転換」の条件について解説する。

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代宏一

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代宏一

2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。

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歴史的な円安…黒田総裁体制の歩みと今後を考える
(Photo/Getty Images)

黒田総裁体制(2013年~)の日銀はどう評価されてきた? 時系列で整理する

 黒田総裁後を考える前に、筆者なりに世間の黒田総裁体制の日銀に対する評価を時系列で以下のとおり整理する。

 2013年の黒田総裁就任時は「金融緩和が足りない、あまりにも消極的である」と批判された白川総裁の金融政策を転換し、金融市場で円安・株高旋風を巻き起こした。株価上昇によって経営者マインドが好転し、長年にわたって停滞してきた賃金が上昇するとの期待も芽生えた。こうした明るい雰囲気を醸成したことは当初高く評価された。

 しかしながら、数年が経過しても賃金は上がらなかったため、次第に「株価上昇によって資本家は潤っても賃金は上がらず労働者に恩恵は行き渡らなかった」という評価に傾き始めた。またマイナス金利政策によって預貯金の利息収入が消失、長期金利の低下によって年金・保険の利回りが低下したため、「国民の資産形成を阻害している」といった批判も招いた。

 この間、2%の物価目標は達成できず、金融緩和の効果に疑問を呈する声は大きくなった。そして2022年には「金融緩和が過度な円安を招いている」として批判の対象に晒(さら)されるなど、世間の日銀に対する評価は厳しい。


日銀が物価目標を達成できなかったのは、何が足りなかったからなのか?

 それは、日本は黒田総裁就任時点(2013年4月)で約15年間もデフレの状況にあり、金融緩和が常態化していたため、金融緩和の手段が限られていたという事情がある。

 就任時点で短期金利は0%(正確には0.1%)、10年金利も1%程度であったため、金利引き下げという中央銀行が採り得る最も伝統的かつ効果的な手段は限られていた。このように有効な手段が少ない中で就任した経緯を踏まえれば、金融緩和の効果が十分に現れなかったのはある意味仕方がない。

 2016年にはマイナス金利の導入、10年金利コントロールなど数多くの新薬を開発したものの、いずれもその効果は限定的で賃金・物価が明確に上昇することはなかった。その上で筆者なりの見解を述べると、日銀に足りなかったのは「政府を巻き込む力」であろう。

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「物価安定の目標」を達成できなかった日銀に足りなかったのは「政府を巻き込む力」
(Photo/Getty Images)

 安倍政権の発足当初はデフレ脱却を政府と日銀が一体になって取り組むとの姿勢が明確だった。たとえば政府が企業に対して賃上げを求めるという当時としては斬新な取り組みも実行された。しかし、次第に政府のデフレ脱却に対するこだわりは薄れ、日銀が孤軍奮闘する構図になっていった。

 思うに、日銀は賃金・物価の上昇に資する財政出動(含む減税)を政府に求めるなどして、政府との連携を強化する必要があったのではないか。「金融政策に限界はない」などと豪語するよりも、金融政策の限界を早期に認め、現実的な消費者物価の予想を提示し、政府に景気対策の必要性を問いかければ、政府は需給ギャップを埋めるための経済対策を真剣に検討したかもしれない。物価目標未達の責任が日銀に押し付けられているのは気の毒に思える。

 続いて、黒田総裁退任後のシナリオについて考える。次期総裁には、黒田総裁時に足りなかった「政府を巻き込む力」が求められるが、どのような人物が予想されているのだろうか。

【次ページ】次期総裁は誰?金融政策はどう変わる?

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まず作者の論理的な誤謬を指摘させていただきます。
(製造業はもうリーディングインダストリーではない)

(製造業以外の産業は伸びていない)
は矛盾です。

続いて私は、このように訂正いたします。
製造業以外の産業は大幅に伸びたにも関わらず製造業は依然我が国のリーディングインダストリーであります。

例えば作者が例として挙げていた情報通信業界に従業する人数は十年間に百万人しか増えてないという表現は、言い方を換えれば「百万人ほど大幅に増えた」にもなります。この業界は少数精鋭なので、百万人はちょうど良い数字で決して少なくありません。
ちなみに、情報通信業界と製造業はお互いに共生関係があります。前者の技術発展は後者の全体的な成長に繋がりますので、日本の情報通信業界はこの30年間に技術の強みを生かして応用研究しかやらない中国を越えて驚異なほど成長を遂げて製造業の優位を強固させた事実が作者は無視して、それを気づいてない方々も多くいらっしゃるのはなぜでしょうか

それは、日本は製造業の拠点を中国を含めて新興国に移して、表向きに新興国の工業化や製造業成長に見えたのです。でも、それは実質的に日本の属国に化しただけで日本はその意向さえあれば国内回帰すれば良い、それだけの話です。

ただ、新興国を属国化する作戦では、アメリカのほうが日本より広く展開したのでどっちか一方的に国内回帰したらもう片方は残された割当を占める恐れがありますので、今でも日米両国は新興国の土地でこのゲーム理論を実践しています。

そのイタチごっこの行き先は、予測には難しいのですが、私は人材の「誘致」より人材の「育成」を大事にする長期的な視野を有する日本のほうが勝算が高いと思います。

国内回帰にとって一番大事なのは国内での資源や人材の確保であり、日本は古来より周辺地域のような大量だが質の低い偽資源国と違って良質な金属産出国であり、森林と海洋などの資源も豊かでこれからの技術進化により、将来メタンハイドレートとレアアースの採掘もうまくやれば資源面では心配いらず最後はやはり人材勝負です。

ただ、日本は自分の強みを捨てて一時的な緩和策、つまり人材の「育成」より「誘致」に力を結集したら、将来は今のアメリカのように酷い社会分断が起き、国が乗っ取られ上級国民だけのものとなり、経済発展どころか国民の安全でさえ危うくなるでしょう。

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