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- 2024/11/06 掲載
日本の航空機工業界の第一人者に聞く、「国産航空機」を製造する秘策とは
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
交通機関で唯一「輸入に依存している」現状
自動車、バス、船舶、鉄道などの交通機関は、自国製造が進んでいるが、航空機はボーイングやエアバスの輸入航空機に依存している。自衛隊で使用する防衛用途の航空機では、国産で製造した事例があるにもかかわらずだ。この状況に危機感を持つことが重要である。というのも、航空機産業は全構成部品の点数が数百万点にまでおよぶ。自動車の2万~3万点に比較すると圧倒的なことがわかる。また、航空機に関わる技術分野も多岐にわたるため、航空機産業に注力することで、国力の増大につながるのだ。
両氏は、「日本がYS-11以来の50人乗りより大きな完成民間航空機を製造できる国になるためには、根本的な意識改革と政府の推進が必要不可欠です」と語る。
国家としての取り組みの成功例では、カナダ政府とブラジル政府がある。同国はそれぞれ航空機産業を国策とすることで、ボンバルディアとエンブラエルを育ててきた。
狭胴機市場への参入と技術戦略
では、日本が改めて国産航空機製造を目指す場合、どの大きさの航空機を狙えば良いのか。両氏は、「狭胴機が適切である」との見解を示す。一般財団法人 日本航空機開発協会(JADC)が2024年3月に公表した資料によると、2023年から2042年の新規航空機需要予測において、狭胴機は機数ベースで全体の74%を占める。広胴機は19%で、リージョナル機は7%である。販売額においても、狭胴機は57.6%、広胴機は40.7%、リージョナル機においては1.5%という数値だ。
ボーイング787、エアバスA350、COMACのC929などの広胴機市場の牙城に入り込むのは容易ではないうえ、現在国内で電動、水素燃料電池を用いて広胴機を飛ばす技術が確立されていない。電動、水素は、重量や体積あたりの出力が小さいため、狭胴機以下のサイズの機体にしか使えないのだ。
また、狭胴機の中でも大型の171から230席の需要が高いことが予測されている。狭胴機でも技術力の向上で航続距離が伸び、中型機(ボーイング767や787、エアバスA330クラス)の市場に食い込んでいくことができる。エアバス最新のA321XLRだと、航続距離は4700nm(8700km)にもなり、羽田空港からシドニー空港まで直行できる。航続距離の長い機体は燃料搭載スペースなどから大型機と決まっていたが、機体単価の低い狭胴機で航続距離が伸びれば、運用コスト面で航空会社にとって有利になる。
「世界で必要とされている航空機の中で1番需要があり、日本で動力源の開発見込みのある、狭胴機へ参入することが妥当でしょう」(両氏) 【次ページ】貧弱な日本の航空政策
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