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- 2023/07/04 掲載
【独自】三菱重工 MHIRJ 山本CEOを直撃、再起なるか?「未来の航空事業像」
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
三菱重工のグループ MHIRJとは
2023年3月に三菱重工は機体の開発中止により三菱スペースジェット(MSJ)を解体した。そしてこれまで通り、ボーイングとエアバスなどの1次サプライヤー(Tier 1)メーカーとして航空機部品を供給し続けるという選択肢を取り、パリでの展示もその内容に沿ったものになった。筆者は、完成機事業への可能性を検証すべく多角経営のボンバルディア社の中のCRJ事業を買収した三菱重工グループのMHIRJに注目した。同社はモントリオールに本社を置く会社。事業拡大の商談のために航空ショーの場はうってつけであり、三菱重工の展示ブースにおいてMHIRJは紹介されていた。
MHIRJは、CRJのメンテナンス・リペア・オーバーホール(MRO)事業が中心だ。その中でCRJの新規製造を継続することは一つの選択肢として考えられる。CRJの製造を行うことで、MROとの両方で事業を展開することが可能だ。
これはCRJのもう一つ上のサイズのボンバルディアCS100、CS300型機事業をエアバスが買収した事例がある。エアバスは、CS機の工場ごと買収し、現在は機体名をエアバスのラインアップに変えてA220-100(元CS100)、A220-300(元CS300)として売り出しており、好調に販売数を伸ばしている。
MHIRJにはCRJシリーズは550/700/900/1000と4機種ラインアップされており、この機体を進化させて再販すべきではないかと考えられる。もちろん、エアバスと三菱重工を単純に比較することはできないことからエアバスにできることが三菱重工にできるとは限らない。
50席から100席クラスのリージョナル機でジェットのカテゴリーのライバルはブラジルのエンブラエル1社しかない。同社とCRJは世界の2強と言われた時期がある。しかし、ボンバルディアがMHIRJに移行し、新規製造を行わないことから実質リージョナルジェットのメーカーとしてエンブラエルは世界唯一の存在となった。
CRJは地域航空路線や小規模空港での運用に適した機体である。MHIRJがCRJの製造を継続することで、市場ニーズに対応し、顧客に対して継続的なサポートを提供することができる。
MHIRJ山本CEOに聞いた、コロナ禍明けのかじ取り
パリ航空ショーで出展する三菱重工のブースにてMHIRJの山本 博章CEOに話を聞くことができた。──コロナ禍明けのこの先にMHIRJの事業をどのようにかじを切っていきますか
山本 博章氏(以下、山本氏):三菱スペースジェットの事業中断は重く受け止めていますが、そこから前に進むために航空機を取り巻くバリューチェーンの中で、どうやって価値を生み出しお客さまや社会に届けるかを考えています。
航空機購入後のエアラインに向けてのアフターマーケットにこそ商機があると思います。メーカーは物を造って終わりではない。運用後の整備や修理などのさまざまなニーズがあり、将来を見据えてそれらを総合的に請け負おう仕事ができればいいなというのが今の考えです。
具体的にMHIRJはCRJのMROを行うだけではありません。今ではエンブラエル機を整備する認証を取り、実際に行っています。A220のルーツはCS100/300であり、もともとはボンバルディアなので、今でも設計や製造のノウハウを持つ社員は多くいます。次の段階としてA220シリーズをMROに組み込むことも始めています。 【次ページ】MHRJの描く未来の航空事業像
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