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- 2023/04/24 掲載
ヤマトとJALが「航空輸送」でタッグ 撤退続きの過去と何が違う?ヤマトに聞いた勝算
ヤマトHDがJALと提携 国内路線貨物専用機運航開始
ヤマトHDはJALと業務提携し、国内路線で貨物専用機の運航を始める。貨物件数の急増と小口化は宅配便業界の将来を揺るがしかねない大問題だ。コロナを契機に電子商取引(EC)市場が拡大し、宅配便の取り扱い個数が急増した。B to Bの商取引は、荷主企業のジャストインタイムの需要に応えることで出荷される荷物が小口化し取り扱い件数が大幅に増加してきている。
これまでのモーダルシフトは、環境への影響を考えて二酸化炭素の排出量がより少ない海運や鉄道へのシフトが 求められたが、現在ではそれにも増して陸送の 扱い件数比率を下げ て、他の輸送モードに転換することが求めら れる。
また、2024年の4月をめどにトラックドライバーの業務時間上限規制がある。これら課題解決は急務だ。
ただ、国内貨物輸送重量(トン)は、2005年以降緩やかな減少傾向にあるのも事実である。荷主企業の出荷で重量のシェアが大きな貨物(石、セメント製品、金属製品など)の出荷量が減少しているのだ。
なぜ今、航空分野への輸送シフトが必要なのか?
現在の日本の国内貨物輸送モードの割合は、2019年度の構成比は、1位が自動車(トラック)で52.7%、海運・鉄道・航空の合計が47.3%という比率になっている。比率データの数値はトンキロであり、実際に輸送した重量に輸送距離を乗じたもので、貨物の輸送力の指針の1つとなる。この数字の単位を輸送重量トンに変えてみると、陸運(トラック)は実に90%を超える。
モーダルシフト(トラックなどの貨物輸送を鉄道や船舶の利用に転換すること)できる部分は順次転換を進めている。
一方で、最短翌日に荷物を届ける宅配便などは、内航船舶(日本国内の貨物輸送だけに使用される船舶)のように時間が掛かる輸送にモーダルシフトするには限界がある。鉄道輸送は、大規模災害が起きた場合、代替となる輸送手段の確保が課題となり、増加していない。
このように航空分野への輸送シフトには理由が出てきた。
JAL、トヨタ、佐川、「失敗続き」の航空貨物輸送事業
航空への輸送モード変更の環境は整ったと言える時期に来ている。しかし、過去における国内貨物の貨物専用機輸送は失敗続きだった。1991年にJALが物流会社とともに立ち上げ就航したのが日本ユニバーサル航空(JUST)だった。ボーイング747貨物機を運航したが、1年余りで運休している。2003年にはトヨタ自動車の戦後の再建を担った石田退三のひ孫が創業した、小型飛行機での貨物運送を専門とする日本の航空会社が、ビーチクラフト1900Cを使ったオレンジカーゴを就航させたが、半年で運航停止となった。
2006年には佐川急便の設立したギャラクシーエアラインズがエアバスA300貨物機を使用し就航したが、2年足らずで事業廃止となった。3社とも、羽田空港を拠点としながら成功しなかった。
大手各社が貨物専用機輸送に苦戦したなか、ヤマトHDの貨物専用機導入における戦略にどのような勝算があるのか。国内航空貨物輸送プロジェクトを主導するヤマト運輸 貨物航空輸送オペレーション設計部 シニアマネージャーの下簗(しもやな)亮一氏に話を聞いた。 【次ページ】ヤマトHDに聞く、航空輸送事業の「勝算」
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