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  • 2023/08/22 掲載

航空機メーカー「エンブラエル」世界3位に躍進のワケ、見習うべきスゴすぎる先見性

連載:「北島幸司の航空業界トレンド」

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ブラジルの航空機メーカーである、エンブラエル。ボーイング、エアバスに次ぎ世界第3位のシェアを誇る。ビジネスジェット市場、軍事機なども手掛ける同社。20年前から持続可能な航空燃料(SAF)を探求し、世界で初めて再生可能資源から作られた燃料によって推進する航空機を販売した。そのスゴすぎる先見性と日本が見習うべき点とは?
執筆:航空ジャーナリスト 北島 幸司

執筆:航空ジャーナリスト 北島 幸司

航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。

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エンブラエル所有機E195-E2テックライオン
(写真:筆者撮影)

世界第3位の航空機メーカー、ブラジルのエンブラエルとは

 ボーイング、エアバスに続き世界第3位の航空機メーカーである、ブラジルのエンブラエル。競合のカナダのボンバルディアが、100~150席クラスのCS機事業をエアバスに、小型のリージョナルジェットCRJ事業を三菱重工リージョナルジェット(MHIRJ)に売却した後は、敵なしの様相となった。

 三菱スペースジェット(MSJ)開発が順調に進んでいれば、MSJの1番のライバルになるはずだったのがこのエンブラエルだった。ちなみにロシアと中国も実機を飛ばし始めたが、これらはまだ世界レベルに達していない。

 エンブラエルは、1969年にブラジル政府の支援で設立された54年の歴史を持つ航空宇宙企業だ。同社は、民間および軍事の両目的のために設立され、15~21名の乗客を輸送できるターボプロップ飛行機、バンデイランテの開発から始まった。ブラジルを最新の技術を持つ国に変えるという夢のもと、現在航空機メーカー世界3位という位置にある。2023年のGDPランキング世界10位の国にとって、誇るべきことだろう。

 日本においてのエンブラエル機の導入は、2008年にJALグループのJ-AirでE170が導入されたときに始まる。以降、E190を加え現在は32機を運用する。鈴与グループのフジドリームエアラインズも2009年から導入しE170とE175で計16機を保有する。

 今後の導入の可能性は、ANAとJALからMSJのキャンセル分がエンブラエルの発注分となる可能性がある。また、IBEXエアラインズでは現行のCRJ700型の9機のうち最古参のJA05RJは2009年導入であり、機材更新の時期が近い。CRJは新造機を造らないことからMSJなき後のリージョナルジェットの位置を独占できるポテンシャルを持つ。

北欧の航空会社のウィデローとUAMの共同開発

 2017年にエンブラエルのリージョナルジェットを発注したのは、北欧の航空会社のウィデロー。2021年にエンブラエルの会社であるイブ・アーバン・エア・モビリティ(イブ)とウィデローの子会社ウィデロー・ゼロにおいて覚書(MoU)を締結している。

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エンブラエルの手がけるUAMのEVE
(写真:筆者撮影)

 Eveの社長兼最高経営責任者であるアンドレ・スタイン氏は次のように述べる。

「2050年までに温室効果ガス排出をゼロにするという世界目標に貢献するために、航空宇宙産業はイノベーションを加速させています。UAMにおけるインフラ、機体、運航、航空交通管理システムなど、新しく最適化されたモビリティ エコシステムを設計するユニークな機会を得ています」(スタイン氏)

 また、同社はエンブラエルとグループの子会社であるAtechと、航空交通管理ソフトウェアの共同開発を行う。同ソフトは世界的に認められ、UAM業界を安全に拡大するため役立つソリューションとなるだろう。

開発進める4つの次世代航空機

 エンブラエルの将来動向を窺うことのできるもう1つの発表が2022年暮れにあった。それは、持続可能な新コンセプトの航空機「ENERGIA」である。

 具体的には、以下の4機種を発表し12年後には実質CO2排出量ゼロを目指す。

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エンブラエル次世代航空機
(出典:筆者作成)

 新技術と再生可能エネルギーを活用した4つの新しい航空機コンセプトの研究を詳述した、同社のイベント「Sustainability in Action」を始めた2021年から1年がたち、具体的な構想となってきた。 【次ページ】20年前からいち早くSAFに目をつけていた

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