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- 2025/05/27 掲載
物流関連2法で相次ぐ悲鳴…でもアスクルロジが「ワンクリック」で対応できた凄い秘密
連載:「日本の物流現場から」
Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。
現場が戦々恐々する、実運送体制管理簿の「3つの課題」
政府が推し進める物流クライシス対策の要である、改正物流関連2法が施行された。その1つである貨物自動車運送事業法(略称は貨物事業法ないしトラック法)では、2025年4月1日から以下の内容が施行される。- 運送契約書面交付の義務化
- 多重下請構造是正のための実運送体制管理簿作成の義務化
- 貨物軽自動車安全管理者の選任義務化 など
これらはいずれも運送業界の健全化を促し、安全対策を強化する政策である。特に多重下請構造については、「元請事業者が中抜きをすることで、我々の経営が苦しくなっている」という中小運送事業者からの不平不満に応える政策だ。
ゆえに、下請構造の下位で実運送を担う中小運送事業者の中には、実運送体制管理簿に対し、安い運賃でこき使われる業界構造からの脱却を期待する事業者も少なくない。
だが一方で、実運送体制管理簿という新たな書類作成業務が加わることに戦々恐々とする現場の声も聞こえてくる。実運送体制管理簿は多重下請構造の最上位にいて、荷主との窓口を務める元請事業者が作成しなければならないのだが、実運送体制管理簿の作成に際しては以下のような課題が考えられる。
- 元請事業者が実運送を担う運送会社を知らず、また階層構造の全容を把握していないケースもあり、まずは全容把握から着手しなければならないこと。
- トラック法では、多重下請構造の是正を目的とし、2次下請までに制限する努力義務を定めており、3次請以下の下請事業者がいる場合には、下請階層構造の整理をしなければ、必要な数のトラック(輸送リソース)を確保できなくなること。
- 実運送体制管理簿の作成に伴い、事務作業が増えてしまう可能性があること。
しかし事業所向け通販「ASKUL」と個人向け通販「LOHACO」を手掛けるEC企業、アスクルの物流子会社であるアスクル ロジストは、改正トラック法施行の3カ月前にあたる2025年1月の時点で、これらの課題をクリアする準備を整えてしまったそうだ。
アスクル ロジスト 輸送事業本部 管理部 部長 才本 淳二氏は、(取材を行った2025年2月時点)「実運送体制管理簿の発行に向けて、まだ若干の調整は残っているものの、基本的な準備はすでに終わっています。発行はシステムで行いますので、業務量の増加はありません」と語る。
【次ページ】輸送手配の工数を「年540時間」削減できたワケ
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