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  • 2025/06/02 掲載

ついに義務化「建設現場の熱中症対策」徹底解説、脱「休めない風潮」でやるべき3施策

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2025年6月、建設現場における熱中症対策がついに法的義務となりました。気候変動による猛暑の常態化と、建設業界での熱中症災害の深刻化などを受け、厚生労働省が制度改正に踏み切りました。本稿では改正の背景を踏まえつつ、現場で起きている実際の事故例、そして建設業に求められる具体的な対策を解説します。
執筆:社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表 浜田 佳孝

社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表 浜田 佳孝

社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表。Hamar合同会社代表社員。法学部出身でありながら、市役所の先輩や土木施工管理技士である父親の影響を受け、土木技術の凄さに興味を持ち、研鑽を積む。そして、市役所勤務時代には公共工事の監督員として、道路築造工事や造成工事などの設計・施工を担当した実績を持つ。
現在は、「建設業の現場を経験した」社会保険労務士・行政書士として、建設業の労務管理・建設業許可・入札関係業務を主軸に、建設業の働き方改革・安全衛生コンサルティングを始めとした「現場支援」業務を行ってる。また、商工会主催の「建設業の働き方改革セミナー」を開催し、働き方改革に関する多くの相談を建設業者などから受けている。
著書に 最新労働基準法対応版 建設業働き方改革即効対策マニュアルがある。そのほか、中小企業の建設業の経営者に向けた YouTubeチャンネルを開設し、建設業界に関係する最新の知識やお役立ち情報などを日々発信している。

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法的に義務化となった建設現場における熱中症対策を解説
(Photo/Shutterstock.com)

熱中症対策の「法的義務」の中身

 2025年6月1日より、建設業を含む高温環境下での作業現場において、熱中症対策が法的に義務化されました。これは、労働安全衛生規則の改正によるもので、WBGT(暑さ指数、図1)28度以上または気温31度以上の環境において、連続で1時間以上または1日4時間を超える作業が対象となります。

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図1:WBGT値とは?
(出典:厚生労働省 資料「職場における熱中症対策の強化について」)


 事業者は、熱中症の初期症状を早期に発見し、作業からの離脱や身体の冷却、医療機関への搬送などの対応手順を定め、従業員に周知することが求められます。違反した場合、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

 今回の義務化は、近年増加する労働災害の深刻化を受けた制度改正の一環です。特に、気候変動の影響で猛暑日が常態化し、作業環境の安全確保がこれまで以上に社会的な課題となっています。

いまだに根強い「休めない」など「義務化の背景」

 建設業は、屋外での作業や重機の使用などにより、熱中症のリスクが特に高い業種とされています。実際、2024年の熱中症による労働災害では、死亡者数が全業種で30人に上り、死亡者および休業4日以上の業務上疾病者の数(死傷者数)で見ると右肩上がりで増加し、過去10年で最多となっています(図2)。

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図2:熱中症による死傷者数と死亡者数の全体の推移


 そのうち2024年における死亡者数については、建設業に従事している人の割合が最も高い結果となっています。2020~2024年で見れば、死傷者数も含めともに最も高い割合です(図3)。

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図3:建設業の割合が最も高い


 一方、建設業界では「少しくらい体調が悪くても休めない」といった風潮もいまだに根強く、休憩や水分補給のタイミングを逃すことが多いとされています。特に中小企業や一人親方などの小規模事業者では、人的・時間的な制約から、十分な熱中症対策が講じられていない現状があります。こうした状況も熱中症が多く起きる原因と考えられています。

 これらの背景から、熱中症への事前の対策が強く求められるようになりました。法改正を機に、現場での安全管理体制の強化と、従業員への教育・訓練の徹底が必要不可欠となっているのです。

 そして、今回の改正規則では作業環境に応じたリスク評価を行い、具体的な予防措置に落とし込むことが求められます。特に建設業では、作業内容や現場条件によって熱中症リスクが大きく変動するため、汎用的な対応では不十分です。現場ごとの状況に応じた柔軟な対策と、それを実行できる体制整備が今後の鍵を握ります。

 こうしたことから、企業経営にも直結する重要なテーマとなっており、制度改正によって、熱中症対策を「努力義務」から「法的義務」へと引き上げとなりました。 【次ページ】義務化による「2つの変更点」
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