• 2025/08/15 掲載

「建設業の長期ビジョン2.0」徹底解説、ただの理想か現実か? 現場に必須「行動4点」

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日本建設業連合会(日建連)が発表した「建設業の長期ビジョン2.0」は、2050年を見据え、AIやロボットなど新技術の活用とともに、持続可能な建設業の未来予想図を示しています。しかし、理想の実現には現場レベルでの具体的な行動が欠かせません。筆者としては、本ビジョンを高く評価しているものの、より地に足の着いた視点で補完すべき点が多くあると感じています。そこで本稿では、長期ビジョン2.0のポイントを解説しつつ、今こそ現場が取り組むべき4つのアクションに焦点を当てて、実践的な課題と展望を提案します。
執筆:社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表 浜田 佳孝

社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表 浜田 佳孝

社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表。Hamar合同会社代表社員。法学部出身でありながら、市役所の先輩や土木施工管理技士である父親の影響を受け、土木技術の凄さに興味を持ち、研鑽を積む。そして、市役所勤務時代には公共工事の監督員として、道路築造工事や造成工事などの設計・施工を担当した実績を持つ。
現在は、「建設業の現場を経験した」社会保険労務士・行政書士として、建設業の労務管理・建設業許可・入札関係業務を主軸に、建設業の働き方改革・安全衛生コンサルティングを始めとした「現場支援」業務を行ってる。また、商工会主催の「建設業の働き方改革セミナー」を開催し、働き方改革に関する多くの相談を建設業者などから受けている。
著書に 最新労働基準法対応版 建設業働き方改革即効対策マニュアルがある。そのほか、中小企業の建設業の経営者に向けた YouTubeチャンネルを開設し、建設業界に関係する最新の知識やお役立ち情報などを日々発信している。

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より地に足の着いた視点で建設会社が取り組むべきポイント(後ほど詳しく解説します

長期ビジョン2.0の概要

 日本社会は現在、労働力人口の減少、少子高齢化の加速、インフラの老朽化、激甚化する自然災害、そしてカーボンニュートラルへの移行といった、これまでに経験のない変化を迎えています。加えて、AIやロボティクス、デジタルツインなどの新技術が日進月歩で進化している状況において、建設業の役割はますます高度化・多様化しています。


 こうした状況の中、日本建設業連合会は「建設業の長期ビジョン2.0」を策定しました。これは、建設業界が直面する構造的課題と将来の社会的要請に応えるための指針として、大変意義のある提言です。「スマートなけんせつのチカラで未来を切り拓く」というコンセプトの下、2050年を見据えた建設業の進化と、その実現に向けた中期的な取り組みの方向性を提示しています。

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図1:ビジョン2.0実現に向けたロードマップ

 ビジョン2.0が描く2050年の建設業の姿は、これまでの延長線上にはない大きな転換を示しています。危険な作業はAIや自律型ロボットが代替し、人はマネジメント業務といった高付加価値領域に集中する時代になるとしています。

 現場はスマート化され、仮想空間上での設計や、デジタル施工管理、遠隔操作による施工が常態化し、完全無災害の実現も目指されます。これにより、技能労働者は単なる作業員ではなく、技術を操るプロフェッショナルとして再定義され、処遇や社会的地位も向上することが期待されています。

 さらに建設業の技術と知見は、地球規模の課題にも貢献する可能性があります。具体的には、自然環境の保全・再生に資する技術開発、災害に強い国土づくり、さらに宇宙空間や海底といった未踏領域への進出など、未来のフロンティアを担う存在として位置付けられています。

129万人不足どう解消?「2軸の対策」と「3つの基盤づくり」

 一方で、こうした長期的展望を実現するため、2035年までに解決すべき中期的課題も明確に示されています。中でも最大の課題とされているのが、129万人に上ると予測される技能労働者の人手不足です。

 現在(2025年度予測)の技能労働者数が299万人であるのに対し、生産労働人口の減少や働く場所としての魅力低減などにより、2035年度には264万人にまで減少する見込みです。一方で、必要となる技能労働者数が393万人(予想)であることから、2035年度に129万人が不足するという計算です。

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図2:2035年度には129万人の技能労働者が不足する見込み

 この深刻な状況に対応するため、生産性向上と入職者増加という2軸で対策を図っていくことを目指しています。まず生産性向上に向けて、政府や関係機関と連携し、「i-Construction2.0」(2040年までに建設現場の生産性を50%向上)の推進により生産性を飛躍的に向上させることを掲げています。

 その具体策としては、工業化(プレキャスト化や3Dプリントなど)や自律型重機導入などによる施工のオートメーション化・スマート化を図るとともに、BIM/CIM・ドローン・ロボットといった技術を活用した建設プロセス全体の省人化・省力化などに多様な取り組みを進めていく計画です。

 同時に、入職者増加に向けて、「新4K(給与が良い、休暇が取れる、希望がもてる、かっこいい)」という新たな価値基準を打ち出しました。建設業が若年層、女性、外国人にとっても魅力的な職業の選択肢となることを目指しています。

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図3:新4K実現に向けた一部の具体的な施策

 これを実現するため、技能者の評価・処遇を見える化する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の活用や、働き方の柔軟化、職場環境の改善、そして多様な人材の活躍推進など、多岐にわたるアクションプランが提案されています。

 そしてこれらの取り組みを進め、ビジョン2.0の実現を目指すための基盤づくりとして、常に推進すべき3つのポイントを掲げています。それが「コンプライアンスの徹底」「安全対策の徹底」「建設業の魅力の発信」です。

 こうした取り組みは、単に人手不足を補うための施策ではなく、建設業の本質的な価値を社会に再認識させ、持続可能な産業として再構築するための戦略的ビジョンであるといえます。

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次のページでは、現場目線で考える、建設会社が取り組むべきポイント4点や二重の変革などについて解説します
【次ページ】【必読】建設現場が“今すぐ”取り組むべき「行動4点」
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