• 2026/06/08 掲載

「AIの電気、地球じゃ足りない」イーロンもベゾスも本気“宇宙でのAI競争”が始まった(2/2)

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“救世主”なるか?「宇宙太陽光発電」のスゴさと致命的弱点

 グーグルやスペースX、ブルーオリジンなど軌道上データセンターの構想に特徴的なのが、「データセンター機能」のエネルギー源として「宇宙太陽光発電」と一体化し、エネルギー供給のボトルネックを解消するという発想だ。

 宇宙太陽光発電(Space-Based Solar Power:SBSP、日本ではSpace Solar Power Systems:SSPSとも)とは、宇宙空間に巨大な太陽電池と電アンテナを配置し、太陽光エネルギーから生み出された電力を地球上の受電アンテナへ送電するという「宇宙の発電所」構想である。

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宇宙太陽光発電の仕組み
(出典:欧州宇宙機関の解説をもとに編集部作成)

 従来の人工衛星が自身の電力のために太陽光パネルを備えるというレベルを超え、「地上の電力網に頼らず、宇宙の強力な太陽光を直接AIの演算エネルギーに変換する」という考え方である。

 宇宙太陽光発電は、1970年代にNASAが実現可能性の調査を行うなど構想としての歴史は長いものの、1990年代の検討では「最初の1キロワットの商業電力に2500億ドルのコストがかかる」と見積もられ、地上の発電所に匹敵する電力を生み出すにはコストがあまりにも高いとされてきた。

 米国だけでなく日本でも基礎研究が続けられてきたが、地上でのマイクロ波送電の技術実証の段階で、実際に発電衛星の開発には至っていなかった。しかし気候変動対策に関わるネットゼロ目標の達成や宇宙輸送の高頻度化などを背景に、2020年前後から研究開発の動きが活発化している。

 米国では2023年に米国の研究所や大学が宇宙での送電実証に成功。日本では小型衛星による初の宇宙太陽光発電実証機「OHISAMA」を打ち上げる計画だ。中国の宇宙ステーションは将来、大規模な発電衛星を軌道上で人が組み立てるための技術実証の場として見込まれている。

 SBSPの最大のメリットはその稼働率の高さだ。天候の影響のない宇宙では、NASAの検討によれば1年間の稼働時間はほぼ100%、太陽の向きに合わせて姿勢を最適化する機能を持たない設計でも60%の稼働率を誇る。地上の太陽光発電は夜間や天候の影響を受けるため、稼働率は30%程度にとどまる。大気の影響のない宇宙ではそもそも太陽電池パネルに当たるエネルギー自体が地上に比べて強力だ。

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宇宙太陽光発電のNASAの検討例
(出典:NASA)
 一方で、スペースXが年間165回という高頻度のロケット打ち上げを達成した現在でも、太陽発電衛星の打ち上げ、宇宙での展開や運用のコストは依然として大きい。NASA検討案にあるSBSP衛星の太陽電池パネルはおよそ3.4キロメートル四方もあり、面積では国際宇宙ステーションの約3000倍となる。これほど巨大な構造物を宇宙に構築した例はまだなく、打ち上げや分割パネルの展開結合、姿勢の維持など実現していない技術が非常に多い。

 地上への送電の課題も解決していない。大電力を電波に変換して安全に送電するには、エネルギー密度を低くする必要があり、受電アンテナの面積もキロメートル級だ。どこに設置するのかといった用地取得の問題もある。SBSPは半世紀経った今でも「夢の宇宙技術」のままなのだ。なかなか地上へ電力を送る段階に到達できないSBSPに対して、需要のほうが宇宙へとやって来た、ともいえる。

【逆転発想】「宇宙地産地消」が電力問題を全解決する理由

 従来の「宇宙太陽光発電(SBSP)」構想は、多数の打ち上げを伴う上、発電したエネルギーをマイクロ波などで地球に送る際の効率、安全性、地上設備の整備まですべてが課題だった。しかし、宇宙データセンターと接続する現代の構想ならば「送電せずにその場でAIが電力を消費する」ことで、受電施設建設や送電ロスの問題を含む地上の問題を回避することができる。

 データセンター側にとっても、地上で電力を奪い合い、老朽化した送電網への接続といったコストに縛られることなく宇宙空間でインフラをスケールさせることが可能だ。データセンター衛星の稼働に伴う放射線対策や排熱管理といった技術的課題は多数あるが、少なくとも地上の生態系に熱を排出するわけではないため環境問題の可能性は小さい。

 「宇宙データセンター×SBSP」構想は、従来のSBSP構想が高度約3万6000キロメートルの静止軌道を前提にしていたのに対し、高度約2000キロメートルまでの地球低軌道での運用する前提となっている。発電量は小さくなるものの、静止軌道への宇宙輸送はコストが大きいため、低軌道でまず発電衛星というシステムを成立させる実績を積む、という点でも合理的だ。

 グーグルのProject Suncatcherは、2027年初頭までに地球観測衛星企業のPlanet Labsと共同で2機の試験衛星の打ち上げを予定している。「発電と計算の究極の地産地消」が実現可能かどうかが見えてくるはずだ。

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