- 2026/07/30 06:50 掲載
EVの悪夢再び? 熱狂の中国AI・ヒト型ロボット開発に迫る危険すぎる“過当競争”(2/3)
EV400社超の“乱立”が示した中国型ビジネスサイクルとは
中国を代表するテック企業であるアリババ、テンセント、バイドゥなどの多くは1990年代に創業された。なぜ1990年代にテック企業が相次いで誕生し、しかも順調に成長することができたのだろうか。重要な理由の1つは、これらの企業が参入した分野には国有企業がほとんど存在していなかったことである。仮に国有企業がすでにその市場を支配していたならば、多くのテック企業は成長できなかった可能性が高い。
もう1つの理由は、1990年代の中国社会には現在よりもかなり自由な雰囲気が存在していたことである。特に当時の朱鎔基首相は、法制度や市場ルールの整備には力を入れたが、具体的に何を行うかについては企業や個人の自主性に委ねる考え方を持っていた。言い換えれば、当時の中国政府は余計な介入を控えていたため、民営テック企業が成長する余地があったのである。
しかし、2013年3月に習近平政権が発足すると、中国社会の空気は大きく変化した。
習近平主席は国内での演説において繰り返し「国有企業をより大きく、より強くする」と強調してきた。換言すれば、習近平政権は国有企業を優遇する方向へと政策を大きく転換したのである。この方針転換は民営テック企業にとって大きな衝撃となった。
話を先に進める前に、中国独特のビジネスサイクルについて確認しておきたい。上図に示したのは中国独特のビジネスサイクルである。
実は、中国のテック企業の多くは基礎研究で大きな成果を上げてきたわけではない。そのビジネスモデルや技術の多くは海外企業から学び、それを中国市場向けに改良・適応させることで成功を収めてきた。
中国共産党の統治の正統性は、経済成長の維持と密接に結びついている。そのため、成功した企業や産業が現れると、政府は補助金などを通じて積極的に支援する傾向がある。しかし、この支援がかえって問題を引き起こすことも少なくない。
なぜなら、ある産業に巨額の補助金が投入されると、その分野に異業種からの新規参入が殺到し、過当競争が発生するからである。太陽光パネル産業や電気自動車産業はその典型例である。2019年には、中国国内の電気自動車メーカーは400社を超えたといわれている。
スケールメリットが重要な電気自動車産業において、政府補助金は発展を促進する一方で、過当競争を引き起こす誘因にもなった。最終的にはBYDなどの大手企業が市場シェア拡大を目指して大規模な価格競争を仕掛け、多くの中小メーカーが市場から退出を余儀なくされた。
たしかに弱小メーカーの淘汰は進んだが、価格競争は業界全体の収益性を悪化させ、大手企業自身にも大きな負担をもたらした。その結果、EV産業全体の成長にも陰りが見え始めている。
政府が新興ハイテク産業を育成しようとする意図は理解できる。しかし、市場メカニズムを歪めるような不透明かつ過度な補助金政策については慎重であるべきだろう。 【次ページ】空前のAIとヒト型ロボットの開発ブームは本物か
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