• 2026/08/12 06:20 掲載

【比較】JX金属・信越化学・イビデンら5社、なぜ「AI特需」でも明暗くっきり?(2/3)

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【比較】5社の最新決算を分析

 5社を同じ土俵に近づけるため、全社売上高ではなく、原則として半導体関連事業の売上高と営業利益を取り出して見ていこう。

 JX金属の2026年4~6月期の半導体材料は、売上高521億円で前年同期比34%増、営業利益144億円で69%増。営業利益率は筆者計算で27.6%となった。信越化学の電子材料は売上高2792億円で16%増、営業利益1019億円で23%増、利益率は36.5%だった。

 レゾナックの2026年1~6月期の半導体・電子材料は、売上収益2990億円で30%増、コア営業利益815億円で92%増。便宜上、コア営業利益を売上収益で割った利益率は27.3%となる。イビデンの4~6月期の電子事業は売上高775億円で37.7%増、営業利益214億円で52.4%増、利益率は27.6%だった。

 SUMCOは事業のほぼ全体がシリコンウエハーであるため連結値を使うと、売上高2150億円、営業損失64億円、営業利益率はマイナス3.0%となる。

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JX金属らと対照的に、SUMCOは営業利益でマイナスとなった
(出典:各社IR資料から編集部作成)

 比較から読み取れる第1の点は、売上高の伸び率より利益の伸び率の差が大きいことだ。レゾナックは売上収益が30%増える間にコア営業利益が92%増え、イビデンも37.7%増収に対して52.4%増益だった。JX金属も34%増収に対し69%増益となった。数量増に加え、販売価格、製品構成、稼働率などが改善した企業ほど、増収率を上回る増益を確保した。

 一方のSUMCOは増収にもかかわらず、売上原価が前年同期の1681億円から1931億円へ増え、売上総利益は373億円から219億円へ縮小した。売上原価の増加額が増収額を上回り、販売数量の回復を営業利益へつなげられなかった。

 ただし、この順位をそのまま企業の実力差とみなすのは危険だ。JX金属は半導体材料に薄膜材料とタンタル・ニオブを含み、信越化学の電子材料はウエハーだけでなく、レジストやマスクブランクスなども含む。レゾナックはIFRSのコア営業利益で、他社は営業利益が中心だ。対象期間も3カ月と6カ月が混在する。

 従って重視すべきは利益額の大小ではない。AI需要が増えたとき、利益率が改善したか、増収率を上回る増益を実現したかという方向性である。この基準では、足元の利益転換力はレゾナック、JX金属、イビデンが強く、SUMCOとの差が鮮明になった。

前行程と後工程の差を生む「2つの要因」

 前工程と後工程の差は、需要の強さよりも、設備負担と製品設計の変化が利益へ伝わる速度にある。

 前工程の起点となるシリコンウエハーは、単結晶の育成から切断、研磨、洗浄まで大規模な設備を必要とする。需要が回復しても、生産能力全体の稼働率が十分に上がらなければ、固定費を吸収しにくい。SUMCOでは300ミリの出荷が増えた一方、200ミリ以下は顧客や製品ごとに強弱が残り、生産体制の見直しを続けている。1~6月期の売上原価率は89.8%と、前年同期の81.8%から上昇した。先端品だけが好調でも、幅広い製品群と工場の採算を一度に引き上げるのは難しい。

 もっとも、前工程材料が不利という意味ではない。JX金属の薄膜材料は売上高456億円で40%増、営業利益153億円で82%増となった。信越化学もシリコンウエハー、フォトレジスト、フォトマスクブランクスの数量増と価格改定を進めた。顧客工程で代替しにくく、市場シェアや技術障壁が高い材料は、前工程でも価格と数量を利益へつなげられる。前工程の中でも、汎用品と先端材料の差が広がっている。

 後工程では、AI半導体の大型化と高密度接続が、需要量と単価の双方を押し上げている。レゾナックの1~6月期は、前工程材料の売上収益が406億円から456億円へ12%増えたのに対し、後工程材料は1096億円から1600億円へ46%増えた。増加額で見ても、前工程の50億円に対し、後工程は504億円に達する。

 イビデンは大型・高多層ICパッケージ基板について、全顧客から引き合いがあり、需要が業界の供給能力を大きく上回ると説明する。四半期ごとの価格交渉で販売価格を維持しやすく、供給不足を背景に基板の平均価格も想定以上に上昇したという。

 後工程の利益が膨らむ仕組みは明確だ。GPU、CPU、HBMなどを近接して接続するパッケージが大型化すれば、基板面積や配線層が増える。封止材や接着材も、適用面積と要求性能が高まる。高度な接続には歩留まり管理と顧客認証が必要で、短期間で供給者を切り替えにくい。この供給制約と切り替えコストが価格決定力を生む。

 今回の決算が示したのは「後工程なら必ず儲かる」ということではない。AI半導体の設計変化を、材料使用量、販売価格、製品構成の改善へ結びつけた企業が、先に利益を獲得したという構図である。 【次ページ】AI特需における「勝者の条件」とは
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