- 2026/08/12 06:20 掲載
【比較】JX金属・信越化学・イビデンら5社、なぜ「AI特需」でも明暗くっきり?(3/3)
AI特需における「勝者の条件」とは
時間軸を「足元」「2027年以降」「AI投資減速時」の3つに分けると、勝者は1社に絞れない。足元の利益成長では、レゾナックとイビデンが先行する。レゾナックは半導体・電子材料のコア営業利益が92%増え、後工程材料の売上収益が46%増えた。イビデンは電子事業の利益率が27.6%へ上がり、需要が供給能力を上回る中で販売価格を維持している。供給不足が続く限り、後工程の2社は数量、単価、製品構成の3つを同時に改善しやすい。JX金属も半導体材料の利益率が27%台に達しており、短期の有力企業に入る。
2027年以降の持続性では、増産後も技術障壁を保てるかが分岐点になる。イビデンは河間事業場を2027年度末から順次稼働させ、2028年度からの業績貢献を予定する一方、それまでの需要には既存工場を活用して対応する方針だ。供給能力が増えれば売上機会は広がるが、業界全体で増産が重なれば、現在の価格上昇が続くとは限らない。
JX金属もAI需要に対応し、韓国で半導体用スパッタリングターゲットの加工能力を増強する。約40億円を投じ、2027年度下期から段階的に稼働を始め、同拠点の加工能力を2025年度比で約2倍にする計画だ。増産後の利益を守る条件は、単なる設備量ではなく、微細化に対応する品質、顧客認証、材料設計の優位性となる。
AI投資が減速した場合の耐性では、製品群の広さと既存顧客基盤が重要になる。本稿の比較では、信越化学の電子材料の利益率が最も高く、ウエハー、レジスト、マスクブランクスなど複数の製品を持つ。JX金属も薄膜材料のほか、磁性材や光通信向け基板材料など、データセンターを構成する複数の用途へ展開する。対してSUMCOはシリコンウエハーへの集中度が高く、工場稼働率の変化が損益へ及ぼす影響が大きい。
ただし、SUMCOには反転余地もある。300ミリ全体の需給が改善し、先端品の数量増が工場全体の採算へ波及すれば、赤字からの利益回復幅は大きくなり得る。同社は2026年7~9月期について、AI関連の先端ロジックとDRAMに加え、サーバSSDの拡大に伴うNAND向け需要の伸びを見込んでいる。
現時点の決算に基づく本稿の判定では、短期の勝者はレゾナックとイビデン、利益の持続性を含む有力企業はJX金属と信越化学、回復局面の反転候補はSUMCOとなる。
後工程優位は当面続く可能性があるが、それは供給不足という循環的な要因と、大型化・高多層化という構造的な要因が重なった結果だ。設備増強で供給不足が和らいだ後も、構造変化を技術と顧客認証で囲い込める企業だけが、AI特需の勝者であり続けるだろう。
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