- 2026/08/13 17:10 掲載
「ロボット大国」日本に試練?58.9兆円「汎用ロボット市場」で勝敗分ける“ある力”
ハードだけでは勝てない?58.9兆円「汎用ロボット市場」
マッキンゼー・アンド・カンパニージャパンは13日、AIを搭載し経験を通じて、学習しながら多様な環境で幅広い作業を担う「汎用ロボット」への移行が、日本のロボティクス産業にもたらす機会と課題を分析したインサイト「汎用ロボットが切り拓く、日本の1,000億ドル市場」を紹介した。製造業の従業員1万人当たりの稼働ロボット台数で、日本は2009年まで世界首位だったが、2024年には5位へ後退した。同年は日本446台に対し、韓国1,220台、中国567台、ドイツ449台などとなっている。国内需要の伸び悩みや海外勢との競争激化もあり、従来型の産業用ロボットで築いた強みが、次世代の汎用ロボットでも通用するとは限らないと指摘している。
また、マッキンゼーは、世界の汎用ロボット市場が2025年の10億ドル(約1,593億円)未満から、2040年には約3,700億ドル(約58.9兆円)まで拡大すると予測している。従来型の産業用ロボット市場については、2040年まで年率約3%で成長し、約800億ドル(約12.7兆円)に達すると見込む。一方、汎用ロボットは今後のロボティクス市場の成長を大きくけん引すると分析している。
日本は長年、産業用ロボットや精密工学、メカトロニクスの分野で強みを築いてきた。一方、マッキンゼーは、従来型ロボットで培った優位性が、そのまま次世代の汎用ロボット市場での競争力につながるとは限らないと指摘する。
日本の課題については、「ハードウェア」の技術力そのものではなく、高度な技術を採算の取れる形で速く、大規模に展開する力にあると分析する。今後は精密工学やメカトロニクスの強みに加え、AIモデルの開発、大規模な実環境データの取得、統合されたソフトウェア基盤などが競争力を左右するとした。
特に、実際に稼働するロボットからデータを集め、そのデータをAIモデルの学習や性能改善へ還流させる仕組みの構築が重要になるという。ロボットを早期に実環境へ投入し、運用データを蓄積しながら継続的に改善する「データフライホイール」を構築できるかが競争力を左右するとみている。
OEMには、標準APIやミドルウェア、OTA更新、シミュレーション、安全システム、ロボット群管理などを統合したソフトウェア基盤の構築が求められる。さらに、予知保全やRaaS(Robotics as a Service)など、ハードウェア販売以外へ収益源を広げる必要があるとしている。
部品サプライヤーについても、ギア、モーター、センサーなどの単品供給だけでなく、演算装置やセンサー、ソフトウェアを統合したスマートジョイントなど、顧客側の統合作業を減らすモジュールやシステムへの転換に機会があるという。
また、国内市場で製品を確立してから海外へ展開する従来型の発想ではなく、製品設計、標準、価格、サプライチェーン、人材などを当初から世界市場を前提に構想する必要があると指摘する。M&Aやアライアンス、海外人材の採用なども展開スピードを高める手段として挙げた。政府もAIとロボティクスの融合を重要分野として支援している。経済産業省はAIロボットやフィジカルAIを見据えた基盤モデル開発などの施策を進めており、国内での技術開発と社会実装を後押ししている。
マッキンゼーは、日本企業が次世代ロボット市場で存在感を維持するには、世界水準のハードウェアをAI、ソフトウェア、データと結び付け、現場への投入と改善のサイクルを速める必要があると指摘する。「ロボット大国」として蓄積してきた技術を、学習を続ける汎用ロボットへ転換できるかが次の競争を左右しそうだ。
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