- 2026/08/25 06:50 掲載
従業員38人で売上73億円の衝撃…世界初「製造AI」で常識を覆す「金沢の町工場」の正体(2/2)
目指すは「アップル・エヌビディア」、1人当たり売上3億円へ
また価格設定からは、アルムならではの経営戦略もうかがえる。「我々が目指しているのは、アップルやエヌビディアといった、従業員1人あたりの売上高ならびに営業利益率が高い企業です。そこで従業員1人頭の売上高のKPIを3億円に設定。そうした狙いも3億3,000万円という価格設定の中にはあります」(三島氏)
実際に直近の業績を調べると、従業員1人当たりの売上高はエヌビディア(2026年1月期)が約514万ドル(約8.2億円)、アップル(2025年9月期)が約251万ドル(約4.0億円)であり、営業利益に関してはそれぞれ約60%、約32%と、こちらも極めて高い数字であった。
なおアルムの売上高は2026年度が約73億円、営業利益率は30%超を見込んでおり、創業当時の8~10倍に相当する。1人当たりの売上高は約1億9,200万円だ。
製品の量産は外部企業に委託し、アルム本体は開発・設計に注力するファブレス体制を敷いているのも、まさにこのような経営戦略からだ。
そのため現在、同社では38名の従業員がいるが、7割ほどがエンジニアであり、間接業務に関してはそもそもスタートアップということもあり、1人のメンバーが複数業務を担っている。さらにはERPの導入などで業務を標準化したり、AIエージェントの導入などDXを推進することで、徹底的に効率化を進めているという。
採用率2%、圧倒的“利益効率”で超優秀人材を採用
「日本の製造業のほとんどの会社が、1人当たりの売上高が3,000万円ほど。超優良企業と呼ばれる企業でも1億円ほどです。この金額では優秀な人材を採用することも、見合った給与を払うこともできません」(三島氏)三島氏は先述した同社の経営戦略の根幹の思いを、このように述べた。そして実際、同社には優秀な人材が集まっていると続けた。そもそも2人自身が、そのような人材でもある。三島氏は東京工業大学を卒業した後、外資戦略コンサルタントならびに上場企業の海外子会社のトップとして、国内外で経験を積んできたキャリアを誇る。
坂下氏は20年以上にわたり医療機器の開発・設計業務に携わってきた人物で、欧州および北米市場で大きくシェアを伸ばした製品の開発にも携わってきたキャリアの持ち主だ。このあたりは後編で改めて触れるが、アルムの描く未来ならびに思想に共感したことはもちろんだが、福利厚生も含めた待遇の良さが、ジョインを決めた理由だと2人は述べた。
実際、長期の休みが年2回あり、年間休日数はなんと145日。残業はほぼなし、だという。
「フルリモートかつ、プライベートの時間も確保されるので、山登りが趣味で信州への移住を希望していたエンジニアが転職してくるようなケースもあります。ただ、かなり人材は厳選するので、採用率は2%ほどです」(坂下氏)
上場はいつ? 従業員300人で「売上高1,000億円超」へ
大手からスタートアップまで、製造業や中小町工場を支援する各種システムやサービスを手がける企業は数多くある。ただそのほとんどが図面のクラウド化など、部分的なサービスにとどまる。対してアルムの場合は、後編で改めて詳しく述べるが、図面の理解から設計、加工プログラミングの自動生成、その後の加工機械の工具セッティングや取り換え、実際の加工までを一気通貫で担う。
単なる工作機械メーカーではなく、単なるAIソフトウェア開発企業でもない。独自のサービスラインを提供するスタートアップであり、現時点では唯一無二のサービス提供会社だと言えるだろう。
「加工領域をサポートするようなサービスや企業はないと思いますし、現時点でライバルはいません」(三島氏)
実際、三島氏はこのように力強く述べた。一方で、独シーメンスが、設計意図や部品の需要・供給、価格、納期、供給リスクなどのデータを活用して、製品開発から部品調達までの意思決定を支援する「Design-to-Source Intelligence」プラットフォームの構想の提案を始めているが、この取り組みはアルムの思想ならびに業務と近いという。
ただ、近しい業態が世界的に盛り上がることは、「結果として同社に注目が集まることにもつながるなるため歓迎しています」と三島氏。パイオニア企業としての自信と矜持がうかがえた。
今後は海外展開なども視野に入れていることから、より優秀な人材の確保を目的に、2031年ごろの上場を目指しているという。一方で、少数精鋭の体制は変えない。そのため「売上高が1,000億円に到達した際の従業員も300名ほどに抑えたいと考えています」と、三島氏。数字の実現も含め、アルムの今後の動向に注目したい。
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