- 2026/10/26 06:20 掲載
【補助金争奪戦】AI企業乱立でヤバい…習近平政権を待つ“作りすぎ”のワナ
連載:テック超大国・中国のゆくえ
1963年、中華人民共和国・江蘇省南京市生まれ。88年来日、愛知大学法経学部入学。92年、同大卒業。94年、名古屋大学大学院修士課程修了(経済学修士号取得)。長銀総合研究所国際調査部研究員(98年まで)。98~2006年、富士通総研経済研究所主任研究員、06年より同主席研究員を経て、現在東京財団政策研究所主席研究員。静岡県立大学グローバル地域センター特任教授を兼務。主な著書に『中国不動産バブル』(文藝春秋)など。
“ルンバの苦境”が示す「技術力だけでは勝てない」現実
しかし、実態は必ずしもそうではない。企業の研究開発は、投資行動と同じようにリスクを抑えながら、利益の最大化を目指す。先端技術を商品化し、消費者に広く受け入れられれば、企業の売り上げと利益は増える。企業はその利益の一部をさらなる研究開発に投じ、製品の改良を進めることで、売り上げと利益の拡大を図る。米アップルのiPhoneは、その典型例といえる。
だが、研究開発が必ずしも売り上げや利益の増加に結びつくとは限らない。技術開発に成功しても、商品化や収益化に失敗する企業は少なくない。研究開発を継続する資金を確保できず、途中で息切れしてしまう企業もある。
ロボット掃除機「ルンバ」を手がける米アイロボットも、その一例である。同社は中国勢との価格競争などで経営が悪化し、2025年12月に米連邦破産法第11条の適用を申請した。その後、中国の主要製造委託先であるピセアによる買収を経て、2026年1月に経営再建の手続きを終えている。
太陽光パネルとEVで何が起きた? 「作りすぎ」が招く消耗戦
アイロボットの事例が示すのは、優れた技術を商品化したからといって、事業が持続的に成長するとは限らないということだ。中国の太陽光パネル産業にも、これと共通する問題が見られる。中国企業は世界市場で圧倒的な地位を築いた後も生産能力の拡大を続けた。その結果、供給過剰による価格下落が起き、メーカーの収益が大きく悪化した。
中国の電気自動車(EV)産業にも、同様の問題が表面化している。中国の強みは、電池の内製化と、部品から完成車までを支えるサプライチェーンにある。こうした強みを背景に、中国メーカーは急成長を遂げた。しかし、2026年に入ると、中国国内の自動車販売が落ち込み、EVを含む新エネルギー車の需要にも減速が見られるようになった。
価格競争が続く中、メーカーの収益も圧迫されている。いったい、何が起きているのだろうか。
背景の1つに、政府の支援策の変化がある。補助金や税制優遇などの支援が縮小すれば、これまで政策に支えられてきた需要は影響を受ける。本来、競争力のある産業は、政府の支援が縮小しても市場で生き残れるはずである。
補助金は新興産業の立ち上げを促すうえで有効だが、企業が補助金に依存するようになれば、かえって市場の選別機能が弱まり、過剰投資や非効率な生産を招きかねない。
太陽光パネル産業では過剰生産による価格下落が収益を圧迫した。EV産業でも、政策支援を背景に多くの企業が参入し、生産能力が膨張したことが、過当競争の一因となっている。
海外市場への依存を高めるだけでは、過剰生産の問題を根本的に解決することは難しい。
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