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  • 2023/02/07 掲載

急成長の山陰合同銀行「サステナブル事業」の全貌、ただの慈善活動で終わらせない“工夫”とは

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山陰合同銀行は、サステナビリティ関連事業に積極的に関わってきた地銀である。特に、銀行の本業として、J-クレジット、サステナブルファイナンスなどの取り組みに力を入れてきたが、これら事業が足元で急成長を遂げているという。どのように「サステナブル事業」をビジネスとして起動に乗せたのだろうか。同行の取り組みについて、山陰合同銀行経営企画部サステナビリティ推進室調査役の門脇亮介氏に聞いた。

解説:山陰合同銀行 経営企画部 サステナビリティ推進室 調査役 門脇亮介

解説:山陰合同銀行 経営企画部 サステナビリティ推進室 調査役 門脇亮介

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山陰合同銀行のJ-クレジットの取り組み
(後ほど詳しく解説します)

販売実績急増中、山陰合同銀行の「J-クレジット事業」とは

 山陰合同銀行は、サステナビリティ戦略に積極的に取り組んできた地銀である。その背景には、同行が拠点を置く山陰エリアが人口減少などが進む課題先進地域ということが関係している。

 そうした状況を踏まえ、銀行の本業として行ってきたサステナビリティ推進の取り組みがある。その1つが、J-クレジットだ。

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山陰合同銀行 経営企画部
サステナビリティ推進室 調査役
門脇亮介氏
 J-クレジットとは、適切な森林管理によるCO2などの吸収量を国が「クレジット」として認証する制度だ。温室効果ガスの排出削減・吸収事業を通じて「クレジット」を獲得した企業は、温室効果ガスを排出する企業に対して、このクレジットを販売することができる一方、クレジットを購入する企業は、クレジット購入を通じて環境貢献企業としてのPRができたり、企業評価を高めたりすることができる。

 山陰合同銀行経営企画部 サステナビリティ推進室調査役の門脇亮介氏は、J-クレジットの取り組みについてこう語る。

「私どもは、2010年からJ-クレジットに取り組んできています。具体的には、カーボンオフセットに取り組むお取引先と当行の営業エリアである島根県・鳥取県・兵庫県内の自治体や事業者が所有する森林とのマッチングを行う仲介役として活動しています。山陰地方は山が多いこともあり、販売仲介の実績の多くは『森林由来クレジット』です。それだけでなく、森林保全の動きを加速させるために、J-クレジットの活用による取引先の企業価値向上につながる取り組みを提案しています」(門脇氏)

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図表1:山陰合同銀行のJ-クレジット販売支援実績(累計)
(出典:山陰合同銀行)


 山陰合同銀行のJ-クレジットによる販売支援実績の累計は、22022年度はすでに8000tを突破したとのことだ。

「J-クレジットの販売仲介を始めてから12年が経ちましたが、ここ1~2年で販売実績はさらに伸びています。好調の要因は、カーボンニュートラル・ESG・サステナビリティの取り組みへの事業者の意識の高まりです。『CO2排出のオフセットに使いたい』『地域の森林保全の取り組みに貢献したい』と希望する事業者が増えており、それに伴って、私どもの実績も増えています」(門脇氏)

 こうした取り組みなどが評価され、山陰合同銀行は、中国地方の金融機関として初となる21世紀金融行動原則「運営委員長賞」を2022年3月に受賞している。

「J-クレジットの取り扱いをスタートした当初は、取扱件数はそれほど多くありませんでした。続けてきたからこそ、今の実績につながっていると考えています。仲介に際しては、ビジネスマッチング手数料をいただいています。この手数料が銀行の収益の大きな柱になるわけではありませんが、経済性を持っているがゆえに継続できているわけで、経済性という視点は欠かせないものだと考えているのです」(門脇氏)

 経済性と社会への貢献の両立が継続する上でのポイントだ、と門脇氏は説明している。

「他の金融機関からも、問い合わせを数多くいただいています。こうした取り組みが他の地域に広がり、横に展開していくことが重要だと考えていますので、情報公開には積極的に応じています」(門脇氏)

2030年までに1.5兆円目指す、「サステナブルファイナンス」の中身

 山陰合同銀行は、銀行の本業の1つであるサステナブルファイナンスでも、明確な数値目標を設定して、営業活動を展開している。

「私どものポリシーに、『地域の課題は地域で解決する』があります。本業であるファイナンスで、地域の課題解決の後押しするために、行内でサステナブルファイナンスの定義を固め、『2030年度までの10年間で1.5兆円を実行』という目標を設定しています」(門脇氏)

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図表2:サステナブルファイナンスの長期目標
(出典:山陰合同銀行)


 2021年度の実績が1,277億円であることから考えると、着実に実行額を上げていくことが必須となる。

「環境課題の取り組みは、多くの事業者に共通する課題です。環境が整わなければ、事業はできませんし、当行も持続可能ではいられません。10年間で1.5兆円という目標設定であるため、10年で割ると1年あたり1,500億円です。『ごうぎんサステナビリティ・リンク・ローン』『ごうぎんグリーンローン』『ごうぎんソーシャルローン』などの商品ラインナップを増やし、目標達成に向けて態勢を整えています」(門脇氏)

 ちなみに、「ごうぎんサステナビリティ・リンク・ローン」は、取引先のESG戦略に合致した取り組み目標を設定し、その達成状況に応じて金利引き下げなどのインセンティブを設定する商品である。「ごうぎんグリーンローン」と「ソーシャルローン」は、資金使途を環境面や社会面の改善を目的とした事業に限定した商品だ。

「これらのローンを広義で捉えて、環境分野では 気候変動緩和と適応および環境配慮に資する事業と定義しています。例としては、再生可能エネルギー事業、省エネルギー事業、脱炭素・低炭素事業などです。社会分野においては、地域経済活性化および持続可能な地域社会に資する事業と定義しています。例としては、基本的インフラ整備、必要不可欠なサービス、医療や教育、雇用創出などです」(門脇氏)

 事業の内容について明確な線引きはなく、個別に丁寧に案件を判断して設定しているとのことだ。そんな、同行のサステナブルファイナンスの事業だが、通常の金融商品とは異なる、サステナブルファイナンスならではの課題もあるという。

【次ページ】借りる側にデメリットも? サステナブルファイナンスの課題

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