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  • 2023/05/16 掲載

植田総裁は「黒田路線」続行、緩和修正が10-12月になりそうな理由

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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日銀植田総裁就任後初の金融決定会合は、「思っていたよりも黒田路線」の一言に尽きる。金融緩和を継続し、金融政策の運営について「1年から1年半程度」の時間をかけて多角的にレビューを行っていくとのことだ。日銀をとりまくマクロ経済の動きを分析しながら、今後の動きを予想したい。

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代宏一

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代宏一

2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。

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植田総裁初の金融政策会合決定の結果は?
(写真:つのだよしお/アフロ)

金融緩和の修正時期は10-12月期が有力か

 これまで筆者は日銀によるイールドカーブコントロール(以下、YCC)の修正時期について、2023年6月か7月の金融政策決定会合が有力であると考えていた。

 しかしながら植田総裁が初めて臨んだ4月の金融政策決定会合の声明文および記者会見の内容を踏まえ、その予想を10-12月期へと変更する。これまでのところ植田総裁に対する印象は「思っていたよりも黒田路線」、この一言に尽きる。早期の政策修正は想定しにくくなった。

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2023年6月か7月など、近いうちの金融緩和可能性は薄い
(Photo/Shutterstock.com)

物価と賃金の連関を強調、現状維持にとどまった金融政策決定会合

 ここで4月の金融政策決定会合を簡単に振り返っておく。まず、金融政策は大方の予想どおり現状維持であった。もっとも、フォワードガイダンスを中心に声明文には変更が加えられた。

 具体的には以下の表現が加わった。

経済・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、「2%の物価目標の安定」を持続的・安定的に実現することを目指していく

 反対に、2020年4月以降継続して記載されてきた以下の表現は大部分が削除された。

当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している

 事実上、政策金利についての指針を撤廃した形だ。

 声明文の内容は、従来に比べて物価と賃金の連関を強調した点が特徴的であろう。2022年以降、輸入物価主導で消費者物価が上昇し消費者の負担が増したことで、日銀の物価目標についてその意義を問う声が一部にあるため、そうした疑問や批判に対応する意図が読み取れる。


 また金融政策の運営について「1年から1年半程度」の時間をかけて多角的にレビューを行うとの記載があった。「1年半は政策変更を行わない」という解釈もできるが、日銀(植田総裁)は最長で1年半かかるとされているレビューの期間中でも状況が変われば政策変更はあり得ると説明した。 【次ページ】伸びを見せる賃金上昇率、金融緩和修正に十分な根拠?

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