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  • 2023/04/15 掲載

植田総裁始動 日銀が“まだ”金融緩和を修正しない背景にある「○○の拡大」

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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黒田総裁は8日に10年間の日銀総裁の任期を終え、翌9日に植田総裁が就任した。植田総裁は黒田元総裁について、肯定的な評価をし、政策について「現状維持が適切である」と述べた。なぜ植田総裁はこのような見解をしているのか。金融緩和の修正へ鍵を握る賃金動向を分析しつつ、日銀がまだ緩和修正しない理由について深堀りする。

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代宏一

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代宏一

2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。

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総裁就任後、12日にG7に出席した植田総裁
(写真:UPI/アフロ)

意外にも「黒田路線」だった植田総裁の就任会見

 4月10日、植田総裁は就任会見に臨んだ。筆者の感想を一言で表現すると「思っていたよりも黒田路線」であった。長短金利操作(イールドカーブコントロール、以下YCC)の早期見直しが必要かどうかという趣旨の質問に対して、植田総裁が「現状の経済・物価・金融情勢にかんがみると、現行のYCCを継続するということが適当であるというふうに考えております」と歯切れよく回答したのが印象的だった。

 同じ質問に対して内田副総裁も「現状においてはこの枠組みの中で緩和を続けていくということが適切なのではないかというふうに思っています」と続いた。また「当面の間は現行の大規模緩和路線を維持されるというお考えなのでしょうか」との質問に対しても総裁は「前体制からの大規模緩和を現状では継続するというお答えになるかと思います」と簡潔に答えた。

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植田総裁は就任会見で緩和継続が適当であると答えた
(Photo/Shutterstock.com)

 そして黒田体制の10年間をどう評価するかという質問に対しては「ひょっとしたら私が黒田総裁が就任された時期に仮に(中略)、総裁であったら決断できなかったかもしれないような思い切ったことをされた」とした上で「デフレでない状況を作り出して、私どもにバトンタッチしていただいたということは、非常にありがたいことだというふうに思っております」と黒田体制に肯定的な回答に終始。筆者の認識では黒田体制の金融政策に対する批判的な言及は皆無であった。

「インフレ目標が未達になるリスク」に警戒

 その後、G7で訪米中の12日には「物価高への対応が遅れるリスクよりも、時期尚早に金融緩和を終了して2%のインフレ目標が未達になるリスクに日銀はより注意を払うべき」との見解を示した。



 総裁就任後の発言から判断すると、4月の金融政策決定会合で早々に金融緩和策を修正する可能性は低下したと判断するのが自然だろう。筆者はこれまで4月か6月の金融政策決定会合においてYCCの修正、具体的には10年金利操作目標の許容幅を現在の0.5%から1.0%を見込んできたが、それは6月もしくはそれ以降になる可能性が高まったと判断している。

 では今後、植田総裁はどういった金融政策のかじ取りをしていくのだろうか。植田日銀が金融政策の修正を模索するとしたら、その鍵は賃金になるだろう。 【次ページ】金融緩和の修正へ鍵を握る賃金動向を分析

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