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  • 2023/05/25 掲載

日経平均3万円突破も要注意? 見かけだけの「株価上昇」に踊らされるとヤバい理由

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日経平均が3万円を突破するなど、日本の株価が急上昇している。コロナ危機からの景気回復期待や円安が理由とされるが、一方で実態を伴わない株価上昇と懸念する声もある。株価の上昇は継続するのだろうか。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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日経平均が3万円を突破するなど、日本の株価が急上昇しているが、この株価上昇は継続するのだろうか?
(Photo/Shutterstock.com)

コロナからの回復期待とされるが…

 5月19日の東京株式市場は、日経平均株価が7日続伸となり3万円の大台を超えた。これは90年8月以来、33年ぶりの高値である。コロナ以降、横ばいが続いてきた株価がここに来て急に動き出したわけだが、株価上昇の要因とされているのがコロナ危機からの景気回復期待である。

 日本は諸外国と比較してコロナからの景気回復が遅れていたが、昨年10月に水際対策が大幅に緩和され、インバウンド消費が戻り始めた。5月に入り新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことで、国内でも消費活動が活発化している。

 実際、2023年1~3月期のGDP(国内総生産)成長率は、物価の影響を除いた実質でプラス0.4%(年率換算ではプラス1.6%)となり、景気回復を印象づける内容だった。これまで日本のGDPは、数値の上ではそれなりの結果が得られていても、前期のマイナスからの反動であったり、特定の支出項目が全体の数字を引っ張るなど、バランスを欠いており、経済全般の回復を裏付けるものではなかった。

 だが、1~3月期のGDPについては、個人消費が堅調に伸びており、従来とは状況が変わりつつあることをうかがわせる。加えて2023年3月期の決算も続々と発表されており、増収増益となる企業が多かったことも市場関係者のマインドを変える要因になっている。

 こうした楽観的な見方がある一方、米国で3銀行が連続して破綻するなど金融不安が囁かれていることや、全世界的に景気減速が進むとの見方が広がっていることから、海外投資家が消去法として日本株を買っているにすぎないとの見方もある。

 株価というのはさまざまな要因が絡み合って形成されるので、株価上昇要因を単純に特定することは難しい。だが今回の株高については、円安の影響が大きく、今後の株価についても為替を中心に考察するのが妥当であると考える。

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今回の株価上昇要因は何をもとに考えれば良いのだろうか?
(Photo/Shutterstock.com)

株高の主要因は円安

 2022年以降、外国為替市場では円安が続いており、日本円の価値は大幅に減価した。多くの上場企業はグローバルに活動しているので、共通基準で見た時の業績が同じであれば、通貨が安くなった分だけ、日本円ベースでの売上高と利益は増大する。株価というのは理論上、企業の利益の倍数という形で評価されるので、株価収益率(PER)が同じと仮定すると、為替が安くなった分だけ株価は上がっていなければならない。

 その点からすると、過去1年間にわたって大幅に円安が進んだにもかかわらず、日本の株価は横ばいであり、実質的には下落が進んでいたと解釈できる。今回の株価上昇は、下がっていた日本株が一定のタイムラグを経て、元の価格に戻る動きと捉えた方が良いだろう。

 上記の議論と表裏一体だが、日本でも本格的にインフレが進み始めていることも、株価を押し上げる原動力となっている。

 日本では長くデフレが続いてきたが、昨年の円安以降、物価上昇が顕著となっており、日銀は金利引き上げを視野に入れ始めた。円安が進むと輸入物価が上昇するので国内経済にはインフレ圧力となる。一方で、新しく日銀総裁に就任した植田和男氏は、当面、大規模緩和策を継続すると表明しており、日本市場には引き続き大量のマネーが供給される見通しである。

 インフレによって物価が上昇した場合、見かけ上の売上高や利益も増大する。一方でコストも上昇するので実質的には何も変わらないが、株価は利益の絶対値が基準となるため、インフレが進めばその分だけ株価も上がる。円安と同時並行で、日本の物価は昨年から顕著な上昇を示していたが、株価は横ばいのままでインフレを織り込んでいなかった。

 整理すると、コロナからの景気回復をきっかけに、昨年来の円安や物価上昇分を株価が織り込み始めたというのが、今回の株価上昇の正体と考えて良いだろう。 【次ページ】インフレ時代には株価に対する常識を変える必要がある

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