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  • 2023/10/02 掲載

保険業界も巨大ITに呑み込まれる? アップルやグーグル、アマゾンの具体策

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GAFAMの巨大経済圏が他の業界に及ぼす影響が加速しています。「銀行、証券業界に限らず、保険業界もアップル、iPhoneの経済圏に呑み込まれる可能性が高いでしょう」と語るのはハーバード大学客員研究員だった山本康正氏です。山本康正氏の著書『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』から、保険業界の現状とこれからを見ていきましょう。
執筆:米ベンチャー投資家 山本 康正

執筆:米ベンチャー投資家 山本 康正

1981年、大阪府生まれ。東京大学で修士号取得後、米ニューヨークの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得。修士課程修了後グーグルに入社し、フィンテックや人工知能(AI)ほかで日本企業のデジタル活用を推進。日米のリーダー間にネットワークを構築するプログラム 「US Japan Leadership program」フェロー。自身がベンチャー投資家でありながら、日本企業へのアドバイスなども行う。京都大学大学院総合生存学館特任准教授も務める。著書に『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(講談社)、『2025年を制覇する破壊的企業』(SB新書)などがある。

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保険業界も巨大ITに呑み込まれるのか?
(Photo:mundissima / Shutterstock.com)

保険業界も巨大ITに呑み込まれる

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『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』
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 銀行、証券業界に限らず、保険業界もアップル、iPhoneの経済圏に呑み込まれる可能性が高いでしょう。理由は大きく2つあります。

 1つは先に紹介したとおり、iPhoneが本人確認のしやすいデバイスであること。もうひとつは、iPhoneには個人の健康など多くのデータが集まる点です。

 保険というのは医療保険であれば、本人の病歴や現在の健康状態、家族の病歴などを元に、価格を設定します。自動車保険も同様です。若くて事故を起こした経験のあるドライバーは保険料が高く、長年ゴールドカードのシニアは安く設定されます。

 つまり正確なデータがあればあるほど、適正な保険の価格が設定できます。そして、このようなデータを元にした料金設定は、保険会社、契約者どちらにとっても得をする形であるとも言えます。

 iPhoneに限ったことではありませんが、多くのスマホにはヘルスケアに関するアプリが搭載されており、歩数、睡眠時間などが記録されます。Apple Watchなどの連携デバイスを使えば、心拍数や心電図なども測定することができます。

 サードパーティのアプリも続々と登場しており、病院で測定した各種画像も含めた人間ドックのデータなどを保管できるものもあります。そうしたiPhoneに入っている各種健康に関するアプリが扱うデータの数は、モデルにもよりますが、新しい機種であれば150種類以上にもなります。

 加えてアップルは、プライバシーに配慮しつつ病院や各種保険機関、研究機関、衛生機関などと連携することで、さらなる健康に関するデータの取得に積極的な姿勢を見せています。このような動きから、今後は「アップル保険」を出してくるのではないかと予測しています。

 医療機関としても、個人に関する情報を保管し続けることは、セキュリティやプライバシーポリシーの観点からリスクが高い行為です。そのためアップル、iPhoneにその役を担ってもらい、必要なときだけデータを借りる方が好都合でもあります。

 もうひとつ、アップルはグーグルやアマゾンと比べ、クラウドまわりの技術が弱いという実態があります。iPhoneにデータを集約しておくことは、自社の特徴からも理にかなっている戦略と言えるのです。

医療費が割引されることは考えにくいが……

 医療費が割引されることは考えにくいですが、今年一度も医療機関にかからなかったら、保険料を割引する。加えて、アップル銀行の口座にポイントを付与する。このようなサービスを提供してくることは、十分考えられます。

 もっと言えば先のDaily Cashに紐づけ、1日1万歩以上歩いたら、ポイントを付与する。結果、健康になりやすく、支払い保険料も少なくなり、国としても医療への支出を減らすことができるので、国の支援も受けやすい。このような戦略で、さらにユーザーをiPhoneに囲い込んでいくことでしょう。

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「今年一度も医療機関にかからなかったら、保険料を割引する。加えて、アップル銀行の口座にポイントを付与する。このようなサービスを提供してくることは、十分考えられます」
(Photo/Shutterstock.com)

 iPhone自体の保証に関する保険も、データを活用することで価格が最適化されることが考えられます。たとえば、これまで水没や落下による故障が多い人は、保険料の割引を低く設定する。逆に、この手のトラブルをほとんど起こさない人は割引率を高くする、といった具合です。

 設定だけでなく、支払請求を受けた際の可否判断も、これから先の未来ではAIがより担っていきます。マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)のデビッド・オーター氏やデビッド・ミンデル氏が、保険業界などへの影響を調査・予想した発表では、具体的な大手保険会社でのAI活用事例が紹介されています。

 発表によれば、これまでは利用料が年間10億ドルの法律サービスを購入し、さらに数十人の弁護士や財務専門家を監査役として雇い、確認していたそうです。そこをAIにより自動化することで、年間数百万ドルのコスト削減を実現。精度においては85%以上を達成している、と述べています。

 さらには、待ちではなく攻め。データを分析し、たとえば16歳を迎える子どもの家族に、自動車保険を提案する。あるいは、今後数日以内に請求書を送ってくるといった予測も行える。このような結果、雇用は確かに減るだろうと論じています。

 一方でリアル、対面型のサービスはニーズがあるし、なくならないだろう。プライベートバンクのような、優良顧客向けのカスタマイズ商品の販売においては引き続き、人によるコミュニケーションが求められるとされています。

 金融業界に限ったことではありませんが、顧客からの電話やチャットに応じる、コールセンター業務は大抵の業界で必要とされています。スタンフォード大学のデジタル経済研究所などは、GPTモデルで訓練した対話生成AIツールの生産性の影響について評価する実験を行いました。

 たとえば、入社直後からAIアシスタントを活用した人は、2カ月後に、AIを使わずに半年間勤務した人と同程度のパフォーマンスを示したそうです。

 「上の者に電話を代わってほしい」との要求が減少すると共に、離職率も低下し、顧客・従業員両者の満足度アップに貢献している可能性もある、と主張しています。

 一方で、ベテランメンバーに同ツールを使っても、影響はほとんどなかったそうです。生成AIの有効性は、その人物のキャリアにも関係すると言えます。 【次ページ】金融機関側がビッグ・テックと組むことが重要に

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