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  • 2024/02/13 掲載

貧しい国で起こる現象「キャピタルフライト」とは? 日本も他人事ではない理由とは

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新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、新規口座開設者が外国株中心の投資信託を相次いで購入していることから、資金が海外に流出する「キャピタルフライト」が始まったのではないかと危惧する声が聞かれるようになってきた。現時点で過度に心配する必要はないが、そうした事態を防ぐには、日本企業の経営改革が何よりも重要である。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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新NISAのスタートをキッカケに、外国株中心の投資信託の購入者が増えている。この状況から、資金の国外流出を指す「キャピタルフライト」が始まったのではないか、と危惧する声が聞かれるようになってきた…
(Photo/Shutterstock.com)

これまでにない投資に対する関心の高さ

 非課税の期間が無期限になるなど、2024年1月からNISAの制度が大幅に改善されたことで、多くの未経験者が投資を始めている。楽天証券における年始の新規口座開設者は、前年同期比で約3倍となった。筆者はこのところNISAに関連してテレビ番組に呼ばれることが多いのだが、共演した若い女性タレントが、何と3回連続で「新NISAで投資を始めた」と話していた。長くこの世界にいる者としては、驚くべき事態と言える。

 日本人はこれまで銀行預金一辺倒で、株式投資にはほとんど手を出さないというのが常識だった。それがここまで一斉に、かつ若い世代を中心に口座開設が相次いでいるのは前代未聞と言えるだろう。「貯蓄から投資へ」というのは政府が掲げてきたスローガンでもあり、それ自体は悪い話ではないが、マクロ的な資金の動きという観点からすると、少々気になる部分もある。

 近年、公的年金も含めた将来不安が高まっており、特に若い世代を中心に、外国の資産にも投資をしなければ、という感覚が育ち始めている。実際NISAでどのような商品が売れているのかを見ると、その傾向は一目瞭然だ。現在、NISAにおける人気ナンバーワンの投資信託は全世界の株式に投資する「eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)」(通称オルカン)だが、この商品は年明けのたった1日だけで、通常の1カ月分の購入があったという(約1000億円)。

 特にネットの場合、人気商品という話が拡散すると、さらに人気が集中する傾向が顕著であり、今後も外国株を中心とした投資信託がNISAにおける主力商品となる可能性は高い。そうなると、たとえ少額であったとしてもマス層が証券口座を開設し、その資金の多くが外国株に向かうことになり、いよいよ根雪のように眠っていた日本人の資金が、海外に向けて流れ出すことになる。

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これまで銀行預金一辺倒であった日本人の行動に変化が見られ始めている…
(Photo/Shutterstock.com)

いよいよキャピタルフライトが始まる?

 こうした状況を見て、心配性な一部の市場関係者は、いわゆるキャピタルフライトがいよいよ日本でも始まったのではないかと危惧している。キャピタルフライトというのは、経済や金融が弱くなった国によく見られる現象で、ある出来事をきっかけに、国民が自国通貨での資産保有をやめ、外国資産へ逃避する行動のことを指す。

 資産の一定割合を外貨で持つことは悪いことではないし、当該国の経済にとっても外国資産の保有は一定の効果がある。日本はまさにその典型で、輸出で稼いだ外貨をドルで運用して多額の収益を得ており、これが国民の所得拡大にも寄与してきた。だが多くの国民が一斉に自国資産を手放し、外国資産を買うようになってしまうと、場合によっては、一連の行動が経済崩壊の引き金となってしまう。

 キャピタルフライトが発生すると、国内で資金不足が発生し、国債の消化が出来なくなる。どうしても資金を集めようとすると高い金利を提示するよりほかなく、政府の利払い費が急増して、財政が危機的状況となる。景気対策への支出はもちろんのこと、状況がひどくなれば、医療や年金など必須の支出も滞る可能性が否定できない。

 企業も資金調達に苦慮するようになり、高い金利で外債を発行する必要に迫られ、業績の悪化要因となる。経済が破綻する国ではキャピタルフライトはよく見られる現象であり、金融当局や政府が最も警戒する事態でもある。

 当然のことだが、今、起こっている外国株投信の人気ぶりはキャピタルフライトではなく、健全な意味での資産運用と言えるだろう。だが、このまま日本経済の低迷が続き、日本円を持ったままでは自分の資産が危ないと多くの国民が考え始めると、それはキャピタルフライトを引き起こすきっかけとなる。その意味では、一部市場関係者の懸念は決して絵空事ではないと考えるべきだ。

 キャピタルフライトを防ぐためには、投資で資産形成をしたいと考える国民に対し、日本企業がより魅力的な投資対象であることを示していく必要がある。同時に外国人投資家にとっても魅力的な投資対象となるよう、内外に明確な企業戦略を示し、海外からの資金流入を促進させる必要がある。

 多くの日本人が外国株を好むことの是非を議論するのではなく、日本企業がより高い成長を実現し、透明性の高い経営を実現すれば、必然的に日本企業に投資する人が増え、一定割合の人が海外投資を進めたとしても、結果的に良いバランスに収まることになる。 【次ページ】日本企業が魅力的な投資対象になるための条件

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