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- 2024/09/13 掲載
TSMCやOpenAIも…活発化する対日投資、経済復活で果たす「ある役割」とは 篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第174回)
中央大学国際情報学部教授/九州大学名誉教授
九州大学経済学部卒業、九州大学博士(経済学)。経済企画庁調査局委嘱調査員、日本開発銀行ニューヨーク駐在員、ハーバード大学イェンチン研究所客員研究員、九州大学大学院経済学研究院教授等を経て2026年より現職。経済財政諮問会議「成長力加速プログラム・タスクフォース」委員、内閣府経済社会総合研究所主任研究官、総務省参与、社会情報学会理事・同評議員、九州大学経済学会会長などを歴任。貿易奨励会優秀賞、テレコム社会科学賞、ドコモ・モバイル・サイエンス賞などを受賞。専門は情報技術革新の経済効果分析。
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日
企業が「効率性だけ」を重視しなくなったワケ
だが、現在この構図は大きく書き換えられている。平和の配当が消滅し、価値観を巡る対立が深まる状況にサプライチェーンの可視化を促す技術革新が重なり、企業の最適資源配分は、効率性だけでなくフェアネスや倫理にも重きが置かれる時代を迎えた。
企業は、消費者、取引先、投資家からそのエコシステムを緻密にモニターされるようになったのだ。しかも、これまで情報の受信者だった消費者は、SNSなどを通じて発信者に転化しており、今後の企業経営では、レピュテーション・リスクを視野に入れた事業展開が欠かせない。
加えて、デジタル化の波はIoT、ロボット、EV、バイオ、産業装置などリアルな領域にも及んでいる。そのため、グーグルやマイクロソフトなどのビッグテックから新興スタートアップまで多くの企業が素材の開発や製造に強い産業集積地へ惹きつけられている。ルート128の復活は1つの象徴だ。
なぜ外国企業の「対日投資」が加速しているのか
リアルな領域は、日本が得意な分野でもある。最近は世界の景色が変わる中で、日本のポテンシャルを見込んだ外国企業の対日投資が相次いでいる。台湾を代表する世界的な半導体企業TSMCの熊本工場新設はその代表例だろう。半導体は、AI時代を迎えて爆発的な需要拡大が見込まれており、平和の配当が消滅した国際情勢にあっては、国防用と民生用のデュアル・ユースでサプライチェーン再編の主役となる戦略物資でもある。
日本はグローバルなサプライチェーンの重要拠点として、TSMCの熊本進出に加えて、半導体の国際的研究機関imecやChatGPTを開発したOpenAIのアジア初となる拠点開設など、外国企業による対日投資で関心を高めている。
AIの学習に欠かせないデータセンターへの投資計画も相次ぎ、グーグルやマイクロソフトなど主要企業の投資総額は4兆円規模と報じられている(日本経済新聞[2024a])。
背景には、(1)これからのAI開発で糧となる産業データが取得しやすい製造業の集積、(2)少子・高齢化や医療・介護などAIによる課題解決への潜在的ニーズの高さ、(3)経済安全保障の観点から国内拠点でのデータ管理を選好するユーザー層の厚み、など日本市場の特性が影響しているようだ。
このほかにも、フェイスブック(現メタ)やAirbnbへの投資実績がある著名なベンチャー・キャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツがアジアで初となる拠点を日本に開設する動きも伝えられており(日本経済新聞[2024b])、投資と資金調達の両面で日本市場が注目されていることは間違いなさそうだ。 【次ページ】日本を成長軌道に乗せる「ビッグ・プッシュ」とは
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