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- 2015/12/24 掲載
ビッグデータやIoT、AIはどう活かすべき? 日本経済活性化への筋道とは 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(69)
分水嶺に立つ日本経済、カギを握るのは技術革新
通信自由化から30年の節目にあたる現在、日本経済には大きく二つの潮流が押し寄せている。人口の減少トレンドとグローバル規模の技術革新だ(連載の第56回参照)。前者は、労働力不足による供給制約と総所得の抑制による需要低迷という経路で経済活動を縮小させる。他方、後者は、生産性向上による供給力の拡大と新サービスによる需要創出で経済活動を拡大させる。どちらの潮流が勝るかによって、今後の日本経済は明暗を分けることになるだろう。
経済的繁栄で重要なのは、限られた人的資源でより多くの富を生み出すことであり、単なる頭数の多さではない。カギを握るのは技術進歩を梃子にした生産性向上だ(連載の第2回参照)。これは、より少ない労働投入(分母の縮小)で付加価値を高める(分子の拡大)ことに他ならず、そのためには、低コストで豊富に利用できる技術が欠かせない。
ほぼ2年で処理能力が倍増する「ムーアの法則」に半世紀以上も導かれた情報技術はその最右翼だ(連載の第68回参照)。
IoTで人手不足を克服し付加価値を高める
今や世界の総人口約70億人に匹敵する数の携帯端末が行き渡り(連載の第56回参照)、その約10倍の量の機器類が次々とつながり始めて、ネットワーク上では天文学的な量の利用可能なデータが生成され、流通するようになった(連載の第57回参照)。
この威力を活かして人と技術が上手く補完し合えば、生産性を高めることが可能だ。たとえば、目視によるインフラの維持管理など、これまでは膨大な手間とコストがかかっていた活動をIoTやビッグデータの力で補完すれば、適材適所による効果的な人材配置で貴重な人的資源の拡散と疲弊を防ぎ、より付加価値の高い活躍の機会を提供できる。
データを活かした効率的なインフラの維持管理が「分母の縮小」に寄与するとすれば、大量のデータからきめ細かくニーズをかぎ取り、新市場を生み出す道は、付加価値向上による「分子の拡大」につながるだろう。いずれも、1人当たり所得を増大させ、新たな財・サービスの購買力を高めるという点で需要の拡大効果が生まれる。
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