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- 2025/02/10 掲載
deep research丸投げは非効率? 野口悠紀雄氏が指摘「ChatGPT活用」で考えるべきこと
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
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deep research丸投げは「効率的ではない」ワケ
OpenAIは、インターネット上の最新情報を調べて長文のレポートにまとめる機能「deep research」を発表した。人手で数時間かかる作業が5~30分で完成する。当面はChatGPTの月額200ドル(約3万円)の有料プラン「Pro」向けだが、いずれ月額20ドル(約3,000円)の「Plus」利用者などにも提供を広げるという。企業が業務用のレポートなどを作るとき、できるだけ早く効率的に作ることが求められるだろう。しかし研究者や執筆者などが論文や文章を書く場合には、丸投げは効率的ではない。
まず、望む内容のものになっていない可能性がある。そもそも論文や文章を書くのであれば、主張したいことや訴えたいことがあるだろう。しかし、「deep research」が作ったレポートがその条件を満たしているかどうかは分からない。
また、出来上がったレポートの内容をうんぬんする以前に、レポートを最後まで書いてもらうのでは面白くない。研究者や執筆者は、書くという作業それ自体に喜びを見出しているからだ。
ただし以上で述べたことは、研究者や執筆者にとってChatGPTが無用だということではない。まったく逆であって、ChatGPTは、論文を書くためのきわめて強力なアシスタントになってくれる。
それは、ChatGPTに、素材やデータを集めてもらうことだ。それを使ってどのような結論を出すかは、自分で考える。
これまでは、素材やデータを見出し、集めるために検索エンジンに頼っていたのだ。その過程をChatGPTに変えることによって、作業の効率を飛躍的に高めることが可能になった。
考えるべきは「ChatGPTでどう情報収集するか」
論文、レポート、著作物などで重要なのは、作業の途中で新しい問題を発見することだ。問題設定は重要だが、最初の設定が正しいとは限らない。試行錯誤を繰り返している間に、正しい問いが見つかる場合が多い。データが集まったり、考えが進んだりすると、それまで考えていた方向付けとは違う方向が良いと分かる場合が多いのだ。だから、いきなり最終結果を出してもらうより、AIと会話を繰り返しながら、試行錯誤したほうが良い。
この目的のためなら、現在のChatGPTで十分だ。というより、そのほうが作業全体を任せるよりも良い。だからdeep researchに丸投げするより、ChatGPTの情報収集機能をどう使うかを考えるほうが、より良い結果を期待できるだろう。では、ChatGPTの情報収集機能をどう使うべきなのか。 【次ページ】事例:欲しい「定量&定性データ」の入手方法
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