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  • 2025/05/16 掲載

自分のスキルに「買い手」はいる? 転職活動で「得意」を活かす前に知るべきこと

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かつてのように新卒で入った会社で定年まで勤め上げることが絶対視された風潮は弱まり、転職によって企業や職種を変える人は珍しくなくなった。さまざまな企業で人手不足が指摘される中で、雇用はますます流動化している。ただ、35歳以上のミドル世代になると、そのハードルは一気に高くなる。転職を試みる人にとって大事なこととは何か。『いつでも会社を辞められる自分になる』(サンマーク出版)を上梓した、ミドル世代専門転職コンサルタント・黒田真行氏が解説する。
執筆:ミドル世代専門転職コンサルタント 黒田 真行

ミドル世代専門転職コンサルタント 黒田 真行

1965年兵庫県生まれ、関西大学法学部卒業。1988年、リクルート入社。以降、30年以上転職サービスの企画・開発の業務に関わり、「リクナビNEXT」編集長、「リクルートエージェント」HRプラットフォーム事業部部長、「リクルートメディカルキャリア」取締役などを歴任。2014年、リクルートを退職し、ミドル・シニア世代に特化した転職支援と、企業向け採用支援を手掛けるルーセントドアーズを設立。30年以上にわたって「人と仕事」が出会う転職市場に関わり続け、独立後は特に数多くのミドル世代のキャリア相談を受けている。著書に『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』(クロスメディア・パブリッシング)、『35歳からの後悔しない転職ノート』(大和書房)など。https://x.com/damadama777

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35歳以上のミドル世代で一気に高くなる転職のハードル。培ったスキルだけで挑むのは難しい…
(Photo/Shutterstock.com)

長所や得意分野を伸ばし、強みにするだけでは…実は足りない

 多くの転職希望者と面談をしてきて実感していることの一つに、主観的な目線がとても強いということがあります。

 たとえば、「私はこれができます」「自分はこれが得意です」と自分ができることを中心にキャリアを考える方法です。確かにキャリアづくりの大原則は「長所伸展」で、自分の長所や得意分野を伸ばし、強みにしていくことにありますが、実はそれだけでは足りないことに多くの人が気づいていない。それは「世の中視点」です。

 長所や得意分野があったとしても、それはきちんと世の中からの需要があるのか、という観点です。その得意なことは求められているのか。どのくらい労働マーケットから必要とされているのか、ということです。

 いくら自分が得意とすることでも、買い手が付かなければ前には進めません。もちろん、不得意なことを無理してやっても継続性がありませんし、ストレスが高まるだけなので、得意なことや強みを活かしていったほうがいい。強みを伸ばしていくという方法で考えたほうがいい、というのは間違いのない現実です。ただし、その強みに需要があるのかどうかは把握しておく必要があります。

なぜ需要が減っていく業界でもしがみこうとするのか

 経験してきた業界や仕事で自分がやってきたことは得意だと思っている。実際に、プロ性がある。しかし、その仕事自体の需要がどんどんなくなっていっている場合はどうなるかを考えておく必要があります。

 構造変化によって需要が減少していきそうな業界や仕事。にもかかわらず、「できます」「得意です」「やりたいです」という理由でしがみつこうとしても、どこかで限界はやってきます。銀行の支店営業の仕事が減少しているのに、長年やってきたキャリアを活かしたいから銀行で営業を続けたい、というのもこのケースです。

 この非合理的な行動の背景にあるのは、いわゆる「サンクコスト」。「埋没費用」と訳される概念で、お金や時間、労力を投じてきたことをやめるのはもったいないから、やってきたことを活かしたい、という思いです。この心理が強すぎると、適切な“損切り”ができずに、のちのち自分が苦しむことになります。

 このままの延長でスキルを伸ばし続けたところで、肝心の需要はどんどん減っていくことになれば、いくら自分が活かしたいスキルでも出番は減っていく一方です。

 私がお会いした中では、新聞やテレビといったマスメディア業界で働く人の中にもこのような人が多くいました。新聞の発行部数が過去25年間で半減している今、新聞記者という職業がこれから華々しく需要が拡大していくとは考えにくく、第一線の記者でさえもほとんどの方は先行きの難しさを、頭では実感しています。

 一方で、新聞記者は専門的な職業であり、若い頃から鍛えてきた取材・執筆・編集など専門スキルが活かせる職種だという自負と、今もなお相対的に恵まれた報酬があるがゆえに、行動したくてもできないという方が多い。得意と条件の両方が重なっていることで、異業種・異職種への転身に挑戦するタイミングが遅れがちになりやすい。

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新聞記者は先行きの難しさを実感しながらも、行動できない人が多いという
(Photo/Shutterstock.com)

 もちろん、そんな中でも動向の変化を敏感に感じ取って、迅速に動き始める人もいます。10年くらい前からネットメディアに転じたり、独立してニュースメディアを立ち上げたりした人たちはその代表格です。 【次ページ】培ってきたスキルの中にある“付加価値”を見つけるには
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