- 2025/11/10 掲載
「楽観バイアス」の恐怖──自分に都合の良い解釈で転職を避けた社員の“悲惨な末路”
1962年生まれ。伊藤忠アカデミーの教育マネジャーを経て、大手人材紹介会社の教育研修部長として従事。斡旋した転職者の多くが早々に離職し、労働市場での価値を自ら下げている人(ジョブホッパー)が多く生まれている惨状に強い問題意識を持つ。そこで、転職定着・離職防止に取り組み、8年間にわたり転職予備軍に対して「転職先での働き方・人間関係構築のノウハウ」を伝え、転職後のミスマッチ退職率を1年間で44.0%から9.1%にまで劇的に引き下げた。その経験を活かし、2006年に組織づくりLABOを設立、代表に就任。日本初の転職定着マイスターとして、転職者および予備軍のべ約2000人に対して個別カウンセリングやセミナーを行っている。併せて、採用側の企業が取り組むべきリテンション(離職防止)策を普及させるべく、全国での講演登壇や主要経済誌への執筆、TV出演などの幅広い活動を行っており、労使両面からの「職場と働き手の最適解」を発信している。
転職したのに、なぜかまた辞めてしまう…理由は明白
転職したのに、またすぐ辞めてしまう──。今、そんな“転職失敗”が、静かに、そして確実に広がりつつあります。
ビズリーチの調査によると、35~49歳で転職を経験した人のうち、前職が在籍3年未満となる「早期離職者」は39.0%にのぼります。
特に35~39歳では、早期離職者の割合は50%に迫りました。つまりこの年代では、一度転職した人の半数近くが3年以内にまた離職しているということです。“定着しない転職”が繰り返されているのです。
さらに別のデータでは、中小企業における転職者の離職率は、3年以内で57%に達しているという衝撃的な結果もあります。
今や年間300万人超が転職する時代です。
しかしその多くが、転職先に根を張ることなく、ふたたび職を探す状況に陥っているのです。
なぜ、こんなことになっているのでしょうか。
理由は明白です。
本来、「転職に向いていない人」が、自分の適性を見極めないまま転職してしまっているのです。
転職とは、“企業から内定をもらうこと”がゴールではありません。
新たな職場で自分の価値を発揮し、信頼を得て、長く活躍すること──それが本当の意味での「転職成功」です。
安易に転職を繰り返してしまう人は、“ジョブホッパー”というレッテルを貼られ、企業からの信用を失い、やがて労働市場での価値を急激に下げてしまう恐れすらあります。
最初の1社、最初の1回の転職でつまずけば、それは将来を左右する重大な分岐点になりかねません。
転職は、武器にもなりますが、使い方を誤れば、自分自身を傷つける“刃”にもなり得るのです。
「転職に向いていない人」は、ほぼ例外なく失敗している
転職を考えるとき、多くの人は希望を抱いています。「環境を変えれば活躍できるはず」
「もっと自由に働きたい」
そんな前向きな想いが、キャリアの新たな一歩を後押しするのは、決して間違いではありません。
ですが、それだけで踏み出してしまうのは危険です。
私はこれまで、大手総合商社の教育子会社で関連会社への人材育成を展開し、その後、大手人材紹介会社(当時、業界2位)で教育研修部長を務めてきました。
人材業界の最前線で見てきたのは、履歴書では測れない“転職の地雷”でした。
スキルがあっても、資格があっても、学歴があっても、「転職に向いていない人」は、ほぼ例外なく転職に失敗しているという現実です。
私は、かつて「知識やスキルがあれば、誰でも転職に成功できる」と信じていました。でも、それは完全な誤解でした。
実際には、スキルも経歴も申し分ない人が、転職先で「すぐに辞めてしまう」「評価されない」「馴染めない」というケースが山のように存在します。
なぜか?
そこには、「転職適性」という目に見えない資質が深く関係しているのです。
転職適性とは、その企業に「向いている/向いていない」という表面的な話ではなく、“自分の中にある判断軸や、考え方のクセ、人との関わり方”といった本質的な部分です。
これを無視して転職をすれば、高確率でミスマッチが起きます。 【次ページ】「楽観的すぎる人」に突きつけられた「指名解雇」という現実
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