- 2025/12/24 掲載
モダナイゼーションは不要になる? GMOあおぞらネット銀行CTOが語る、AI時代のDX
元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」
前編はこちら(この記事は後編です)
技術部と事業部の”摩擦”とその乗り越え方
前編では、GMOあおぞらネット銀行が「第二創業」を掲げ法人向けサービスに特化し、利用者の声に耳を傾けてサービスの改良を重ね、急拡大を実現した軌跡をたどった。また、その背景には「勘定系とフロントの疎結合」というアーキテクチャの特徴と、テックファーストを掲げてエンジニア中心に構築した組織体制・企業文化があることも確認した。
オラクル社が提供するコア・バンキング・ソフトウェア・プラットフォーム「FLEXCUBE(フレックスキューブ)」を使用している同行の勘定系について、矢上氏は「メインフレームに比べればもちろん柔軟性が高いものの、それでも勘定系であることには変わりないので、仮に何か変更を加えようとすると、やはりそれなりに手間暇がかかります」と説明する。
そこで、「あえて勘定系はほとんど標準仕様のままにしておいて、利用者さまに近いフロント部分で、付加機能・修正機能を独自に開発しています。エンジニアもフロントの専門人材を揃えているので、細かなシステム改良も外部とのやり取りを最小限に抑え、スピーディーに進めることができるのです」と語る。
GMOあおぞらネット銀行の組織体制は、できるだけ縦割りを廃し、ビジネス部門からエンジニアまで日々、フラットに議論できる環境を整えているという。しかし、この体制も「最初からスムーズに動き出したわけではない」と矢上氏は明かす。
「実を言うと、最初の何年かは『ビジネス側の要件の出し方が悪い』『エンジニアが言った通りに作ってくれない』といった摩擦が少なくありませんでした。しかしその後、双方で地道に対話を重ねるうち、要件の適切な出し方や、実装面での制約、ビジネスの観点での優先順位などについて、相互理解が少しずつ進んでいきました。エンジニアであろうとなかろうとテクノロジーについては必ず勉強しておくことを前提とし、今ではお互いに何をすべきかという観点でコミュニケーションを重ねる姿勢が組織全体に浸透していると感じています」(矢上氏)
デジタルバンク2社を含み「矢継ぎ早に機能拡充」
GMOあおぞらネット銀行は利用者の声を反映させるスピードと柔軟性を重視したアーキテクチャ、組織体制によって、矢継ぎ早に機能拡充を重ねてきた。- 2023年1月 オンライン納付できる「Pay-easy(ペイジー)」への対応開始
- 2023年2月 日本政策金融公庫の国民生活事業/中小企業事業の融資金返済口座振替対応開始
- 2023年5月 キャッシュカード不要でセブン銀行ATMでアプリから入出金が可能な「スマホATM」の対応開始、Visa・Mastercardデビットカードの利用先がインターネットバンキングの入出金明細上で表示される機能を追加、法人向け「GMOあおぞらネット銀行 海外送金(法人)powered by Wise」の提供開始
- 2023年12月 デビットカードのサブカード発行 最大9,998枚のデビット機能単体カード(サブカード)の発行が可能に
- 2024年3月 法人向け「GMOあおぞらネット銀行 海外送金(法人)powered by Wise」取扱通貨に中国人民元を追加
同社は利用者の声を反映し、2025年にかけて継続的な機能改善を進めてきた。1月には外貨定期預金(1カ月もの)を開始し、個人・法人・個人事業主まで幅広い資産運用ニーズに対応。2月には法人向けにサブカード発行機能を拡充し、部署別のカード管理を可能にしている。
さらに個人事業主の口座開設手続きを見直し、セルフィー本人確認により最短当日から利用可能としたほか、進捗確認機能も強化。5月以降は定額自動振込や振込限度額申請の利便性を高め、6月には総合振込のCSVチェック・作成ツールを提供するなど、業務効率化と利便性向上を図っている。
2025年7月には池田泉州ホールディングスグループと01Bank、11月には印刷や広告などの事業を通じて中小企業との取引が多いラクスルと「ラクスルバンク」をともにスタートさせるなど、サービス開発を加速している。 【次ページ】モダナイゼーションはもはや必須ではない
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