• 2025/09/23 掲載

Klarna(クラーナ)とはどんな企業か?小売店「売上増の救世主」から「買い物のOS」への革新(2/3)

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創業者と経営陣の歩み

 Klarnaを創業したのは、セバスチャン・シーミアトコウスキ(Sebastian Siemiatkowski)氏、ニクラス・アデルバルト(Niklas Adalberth)氏らだ。彼らはストックホルム経済学校で出会い、Eコマースの「支払いの不便さ」を解消するアイデアから事業を始めた。

 2005年当時、オンライン決済はカード情報の入力が必須で、多くの消費者が詐欺や情報漏えいを懸念していた。そこで「商品を受け取った後に支払う」という仕組みを導入し、瞬く間にスウェーデン国内で普及した。

 現在もCEOを務めるシーミアトコウスキ氏は、データ活用やAIを軸にした戦略を推し進めており、彼のビジョンは単なる「決済会社」ではなく、生活に溶け込む金融サービス企業へと進化させることにある。

Klarnaが世界で注目を浴びる背景

 Klarnaがここ数年で再び注目を浴びている理由は単なる「BNPLの代表格」という枠を超えている。第1に、利便性の高い決済インフラとして小売業者に大きな売上増加をもたらしている点だ。たとえば、米国市場ではKlarna導入店舗の平均購買単価が20~30%向上すると報告されている

 第2に、消費者にとっても「金利ゼロで小分けに払える」という仕組みが生活防衛の選択肢として浸透している。物価高や金利上昇の中で、負担を分散できる支払い手段は大衆性を帯びている。

 さらに2025年の上場によって資本市場での存在感も増し、金融機関からの信用も取り戻した。つまり、Klarnaは「単なる便利アプリ」ではなく、マクロ経済環境における消費行動のインフラになりつつあるのだ。

多角化するサービスと製品群

 Klarnaが提供しているのは「後払い」だけではない。近年は金融とショッピングを横断するスーパーアプリ戦略を展開している。主力のBNPLに加え、デビットカードや貯蓄口座、リワードプログラムを備え、アプリ上では価格比較やセール情報の通知、配送追跡や返品管理など「購買体験の全体」をカバーする仕組みを作り上げた。

 これにより利用者は「商品を探す→比較する→支払う→受け取る→返品する」という一連の流れを一つのアプリで完結できる。さらに、米国では広告サービス「Klarna Ads」を展開し、加盟店舗のマーケティング支援によって収益の多角化も進んでいる。

    ・主なサービス一覧
  • BNPL(分割払い:Pay in 4、長期分割)
  • 即時決済(Pay Now)
  • Klarna Card(デビットカード型プロダクト)
  • 貯蓄口座・キャッシュマネジメントサービス
  • ショッピングアプリ機能(価格比較、セール情報、配送追跡、返品管理)
  • 広告・マーケティング支援(Klarna Ads)

Klarnaの市場での立ち位置と競合との違い

 2025年9月にニューヨーク証券取引所に上場したKlarnaは、初値で15%上昇し、時価総額は約150億ドルとなった。これは2021年の460億ドルというピーク評価からすればまだ大きく下がっているが、投資家にとって「収益性回復のシナリオ」が見えたことを意味している。

 実際、2024年は四半期ベースで黒字を計上し、ユニットエコノミクスが改善したことが投資家心理を支えた。資金調達面ではSequoia CapitalやSilver Lakeといった著名VCに加え、VISAやSoftBank Vision Fundが過去に出資していることも知られている。IPOによる資金は新規市場への進出とAI開発への投資に充てられるとされ、金融テクノロジー企業として「再成長期」に入ったと見るアナリストが多い。

 BNPL市場にはAfterpay(豪Block傘下)、Affirm(米国)、PayPal Pay Laterなど強力な競合が存在する。しかしKlarnaの特徴は「金融サービスと小売機能のハイブリッド」にある。Affirmがクレジット志向で比較的高額商品に強いのに対し、Klarnaはアパレルや日用品といった低~中価格帯の商品に強く、購買頻度の高さで優位に立つ。

 またPayPalのBNPLは既存の決済サービスに付随するものだが、Klarnaはアプリ中心に「発見から購入まで」を統合している。この差は消費者にとって「買い物そのものを支えるインフラ」としての価値につながり、結果的にユーザーエンゲージメントの高さに表れている。

 つまり、BNPL業界で単なる分割払い企業にとどまらず、「ショッピング体験を再設計する企業」としてのポジションを築いている。 【次ページ】日本市場での展開状況
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