- 2026/06/29 掲載
軍事大国ロシアの「AI敗北」は他人事ではない…日本の成長戦略にも潜む“危険な発想”(2/2)
ロシア転落の分岐点、AI以前からその原因はあった
実は、ロシアの遅れはAIから始まったことではない。それ以前の時代においても、新しい技術であるIT分野において中国は世界第2位であり、電子マネーのアリババや、検索エンジンのバイドゥなどの企業が活躍していた。
それに対して、ロシアはずっと遅れていた。
AIにおける順位は、ITにおける順位とよく似ている。核兵器や宇宙開発における順位では、ロシア(ソ連)は米国に次いで世界第2位だったが、ITになると、ロシアはずっと遅れてしまったのだ。
重厚長大産業の時代において、ソ連は軍事、宇宙、重工業の分野で、米国に対抗しうる実力を持っていた。ところが、ITの時代になってロシアは遅れた。
程度の差はあるが、これは日本の場合と似ている。
要するに、中国と米国は、政治体制は非常に違うにもかかわらず、IT産業の面ではどちらも強い。それに対して、日本とロシアは同じようにITの時代に遅れた。AIの時代になっても、その傾向が続いている。
なお、ロシアの場合には、制裁によるAI半導体・高性能計算資源へのアクセス制約も大きな障害だろう。ロシアはAIで米中を追う姿勢を示しているが、欧米制裁が重要技術へのアクセスを制約していると報じられている。
また、大学の教育の差も重要だ。中国の大学は、コンピューターサイエンスや情報工学などの新しい分野の学部を創設した。学生は米国や英国に留学して最先端技術を取り入れた。
ところが、日本やソ連・ロシアでは、大学は古い分野の学部構成に凝り固まっていた。そして、情報の重要性が、十分認識されなかったのだ。頭脳流出ということもあったのだろうが、もっと大きな差は、高等教育における革新度の違いだったのではないだろうか?
日本とロシアのどこが似ているのか
米国と中国が似ているのは、重工業体制にとどまらず、情報経済体制に進んだことだ。これは、一般に言われる区別、つまり「独裁政治か否か」とは関係ないことに注意が必要だ。これを図示すると、以下のようになる。
現代の世界で経済的に繁栄できるかどうかは、重工業体制を続けたか、あるいは情報経済に変革したかの違いによる面が大きく、これに成功したのが、米国と中国だ。そして、失敗したのが日本とロシアだ。
そして、重工業体制が情報経済体制に進展しえたかどうかの違いが、決定的に重要だ。
では、なぜ中国や米国は重工業体制から脱却しえたのに、日本やロシアでは成功しなかったのか。
「政府主導」は有効なのか、AIが発展する真の条件とは
米国が成功したのは、比較的よくわかる。政治的に自由であれば、新しい経済活動を切り開く人たちが先行して、社会全体を変えていく。政府が主導しなくとも(あるいは、「しないために」)経済は変革をとげ、成長するのである。ところが、実は中国についても同じようなことが言える。中国でIT革命を実現した人たちは、政府の指導に従って行ったのではない。
重要だったのは、鄧小平以来の改革開放路線であり、さらに1990年代に「抓大放小」、すなわち「大をつかみ、小を放つ」という国有企業改革が進められたことである。
国家にとって重要な大企業・基幹産業は政府が掌握する一方で、中小国有企業については、民営化、再編、売却などを含む改革が進められた。こうした改革開放の環境の中で、民間企業が成長する余地が広がった。その中から、アリババのような革新的な企業が生まれてきたのである。
AIへの動きも、このプロセスの継続として起こっている。つまり、経済構造全体が大きく変われるかどうかは、「政府がコントロールしない」ことにかかっているのだ。
米国や中国では、それがIT化とAIの発展を実現した最も重要な条件だと考えられる。
ところが、日本では新しい企業が自由に成長できる条件がなかった。ロシアも同じだ。
これは、今後についても言えることだ。高市政権は、成長分野は17分野と決めて、そこへの投資を政府が主導しようとしている。こうした政府主導の分野選定が、かえって新しい企業や技術の自発的な成長を阻害する危険があるのだ。
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