- 2026/07/27 06:30 掲載
「これ何だっけ」が即解決する時代へ…ChatGPTが破壊した「情報アクセス格差」の正体
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
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ネット検索で名前が出ない「もどかしさ」
いつも使っている商品を、Amazonなどのオンラインショップで注文したい。ところが、その商品の名前が分からない。こうしたことが、しばしばある。先日は、布を留めるための金属製の道具を買いたいと思った。形も用途も分かっている。これまでに何度も使ったことがある。しかし、「安全ピン」という言葉が、どうしても思い出せなかった。
しばらく前であれば、こうした問題はなかった。文房具店や雑貨店に行き、店頭に並んでいる商品を見ればよかったからだ。あるいは、実物を持って行って店員に見せて、「これと同じものが欲しい」と頼むこともできた。
ところが、オンラインショッピングでは事情が違う。検索欄に「安全ピン」などと商品名を入力し、画面上に表示された候補から選ばなければならない。
「金属製の小さな留め具」「布を留める針のような道具」などと入力することはできるだろう。しかし、検索結果には、クリップ、画びょう、ホチキス、手芸用品など、さまざまなものが表示される。目的の商品にたどり着くのは容易ではない。また、目的のものが表示されない場合もある。
物の形も用途も分かっている。ただ、その物を表す言葉が出てこない。このわずかな空白が、インターネットの世界では大きな障害になるのだ。
インターネット情報社会の「盲点」とは
インターネットは、膨大な情報を誰でも利用できるようにした。これは人類史上の大きな進歩だ。しかし、これを利用するには、1つの重要な条件があった。何を検索すればよいか、その名を知っていなければならないという条件である。検索エンジンは、入力された言葉に対応する情報を探す。したがって、対象物の名前を知っている人には非常に便利だが、名前を知らない人には使いにくい。たとえば、花の名前が「ポーチュラカ」だと分かっていれば、写真、育て方、苗の販売店などを簡単に調べられる。しかし、その名前を知らなければ、検索の出発点がない。
これは花に限ったことではない。見慣れない工具、家具の部品、電気器具、昆虫、衣服の金具など、私たちは多くの物を目にしている。しかし、それらの正確な名称をすべて知っているわけではない。
インターネット上には答えが存在している。それにもかかわらず、質問に使う言葉が分からなければ、その答えに到達できない。これまでのインターネット情報社会には、このような逆説があった。 【次ページ】名前で検索する時代は過去になる
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