- 2026/09/02 06:40 掲載
なぜ優秀な人ほどAI時代に脱落? 米マイクロソフト現役が説く“才能を超える武器”
前編はこちら(この記事は後編です)
AI時代に価値を出し続ける人材の共通点、「やる」ことの優位
牛尾氏がチームの中で観察してきた中で、生産性が高い人とそうでない人の差は極めてシンプルだ。「エージェントを“ゴリゴリ”に使っているかどうか」という、一見当たり前に聞こえる違いが、実際の成果に大きな開きを生んでいる。米マイクロソフトでは全員にAIを使える環境が提供されているが、使い方の深さは個人の選択に委ねられている。本格的に活用している人もいれば、たまに使う程度の人もいる。強制はない。しかしその選択の積み重ねが、時間の経過とともに大きな差となって現れる。
そして牛尾氏が最も重視するのは、変化への対応力だ。AIの世界では、昨日まで有効だった手法が今日には陳腐化する。自分が半年かけて作ったものが競合の新しいサービス1つで無意味になることも珍しくない。こうした環境で焦らず、かといって変化を無視せず、地道に対応し続けられる人間が強いと同氏は言う。
「予想しても外れるし、心配しても仕方ないことです。そこに労力を使っても無駄じゃないでしょうか。何か変化が起こった時に『これはすごい大きな変化だな、では来週対応しよう』と、少しずつ対応していくだけでいい」(牛尾氏)
一方でマイクロソフトの現場では、あまり騒がず、着実に業務へ組み込んでいく姿勢が根付いている。「別に早くない。でも着実にやる」──この地道さが、1年後に大きな差を生む。
もう1つ、牛尾氏が力を込めて語るのが「やる」という行動そのものの価値だ。氏自身の経歴が、その説得力を裏付けている。
かつてマイクロソフトのMVP(最も価値あるプロフェッショナル)として表彰された優秀なエンジニアたちが、「まだ自分はすごくないから」「英語が十分でないから」と尻込みして応募しなかった中、牛尾氏だけが実際に米国本社への採用試験に応募した。結果、実際にはエンジニアの優劣ではなく、応募した人間だけが採用の土台に立てた。
「僕は明らかに彼らみたいにMVPではないし、彼らの方が才能あるに決まっています。でも僕は採用試験を受けたのです。少なくとも受けたから受かったのです、たまたまラッキーだったとしても」(牛尾氏)
才能でも英語力でもなく、「やったかどうか」が結果を分けた。この構造は、AIの活用でも同じだと牛尾氏は言う。多くの人は「そのうち」「もう少し準備が整ったら」と先送りにする。しかし実際に動いた人間だけが経験を積み、次の変化への対応力を育てていく。
自己肯定感の問題についても牛尾氏は独自の見解を持つ。「仕事がうまくいかない=自分に価値がない」という等式は心理的に不安定な状態であり、本当の意味での自己肯定感とは、うまくいっても失敗しても「自分には価値がある」と感じられる状態だ。それとは独立した問題として、変化の激しい時代にアウトカム(成果)を出し続けるための技術や判断力を磨くことが求められる。 【次ページ】「部下としてのAI」をマネージする新しい役割
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