- 2026/08/28 06:40 掲載
【EDR選定術】3割が乗り換え検討…ガートナーが明かす“決め手”と4つの運用改善
3割超が“ベンダー変更”予備軍、EDR乗り換えが厄介なワケ
サイバー攻撃の高度化や巧妙化、さらにテレワークによる社外業務の一般化を背景に、従来からのデバイスへの脅威侵入の防御に加え、侵入を前提とするデバイスの振る舞い監視を通じ脅威の検知・対処を狙いとしたエンドポイント保護(EDR:Endpoint Detection and Response)ツールの採用も、すでに一定規模以上の組織では当たり前となっている。ガートナーが2025年6月に実施した調査でも、全体の約8割がEDRを導入済みと回答している。
ただし、その運用は必ずしも順調とは言えなさそうだ。導入済みと回答した企業の4割以上、全体では31.8%が「導入しているが、機会があればベンダーを変更したい」と回答していることからもそのことは見て取れる。
「既存EDRツールに不満を感じる理由はさまざまでしょう。ただし、ツールの置き換えは本来的にベンダー変更のみならず、ツールにひも付く既存業務の見直しを伴いかねない厄介な取り組みです」と語るのは、ガートナー ディレクター、アナリストの鈴木弘之氏である。
とりわけEDRツールは、脅威の振る舞い検知から調査、封じ込め、復旧までを担い、「カバー範囲の広範さから、ツールの横並びの比較も一筋縄ではいきません」(鈴木氏)。
では、この困難な取り組みをどう進めればいいのか。そのための貴重な情報源として鈴木氏が紹介したのが、ガートナーが発行する調査レポート「マジック・クアドラント」である。
「リーダーで選ぶな…」マジック・クアドラントの落とし穴
マジック・クアドラントの一番の特徴は、特定市場のベンダーを横並びで分析し、「ビジョンの完全性」と「実行能力」の2軸チャートへのマッピングを通じて、市場でのベンダーの位置付けを分かりやすく表していることだ。ビジョンと実行力の双方にすぐれている場合には「リーダー」、市場での知名度は高い一方で新たなニーズ対応が遅れている場合には「チャレンジャー」、先見性はあるが、実行力に欠ける場合は「概念先行型」、特定市場やユースケースに特化している場合は「特定市場指向型」と分類される。
2025年のEDRのマジック・クアドラントでリーダーと位置付けられたのは「CrowdStrike」「マイクロソフト」「SentinelOne」などだ(下図)。
ただし、「それだけを理由とする安易なツール選びは厳禁です」と鈴木氏は注意を促す。
マジック・クアドラントが取り上げるベンダーはいずれもガートナーの評価基準を満たしている。その時点で、総合的なツールの水準は高いということだ。
「ツールの中には、独自の機能性や使い勝手で差別化を実現しているものも少なからず存在します。その点を理解したうえで、自社のセキュリティやオペレーションに踏み込み、『どのように』『どれほど』の改善/強化を目指すかの視点でツールを評価します」(鈴木氏)
大いに活用を見込める機能として紹介したのが、Webでのマジック・クアドラントの画面上に配置された「インタラクティブ機能」だ。
自社の要件を基にマジック・クアドラントをカスタマイズする機能であり、「EDR機能の深さ」「管理機能の使いやすさ」などの選定時の重み付けをスライダーの操作のみで容易に調整できる。
ユーザーの生の声はツール選定における重要な参考情報だが、画面ではその確認も可能となっている。鈴木氏は、「注目すべきはマイナスの評価。そうした評価を受けたベンダーへ事前に確認することで、少なからぬ後悔の回避につなげられます」とアドバイスする。
入れ替わりが止まった“序列”、EDR市場に何が起きたのか
鈴木氏によると、市場トレンドもマジック・クアドラントの変化から読み取れるという。2022年の調査以降、ベンダーの入れ替えやポジショニングの変更が少なからず発生した。対して、2024年と2025年ではほぼ変化がなく、「そこには市場の成熟化が端的に表れています」(鈴木氏)。
ガートナーではEPP(Endpoint Protection Platform:エンドポイント保護プラットフォーム)市場の今後について、「ツールのイノベーションは限界を迎え、ベンダーは今後、運用改善を支援する隣接製品、それらとの統合、生成AI活用のための研究開発に力を入れる」と予測する。
なお、ガートナーではマジック・クアドラントの情報を補完する「クリティカル・ケイパビリティ」も提供する。EDRとしてのコア機能や、ワークプレース別のユースケース評価スコアも明示されており、マジック・クアドラント同様、トラブル事例といったネガティブ情報も確認できる。
では、機能の優劣が付きにくくなった市場で、企業は何を決め手にツールを選べばいいのか。日本企業の実際の選択には、その手がかりとなる傾向が表れている。 【次ページ】【図版あり】リーダーが選ばれない? 機能比較に代わる“ある軸”
AI・生成AIのおすすめコンテンツ
AI・生成AIの関連コンテンツ
PR
PR
PR