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  • 2022/10/05 掲載

政府の為替介入と金融緩和、政策の方向感は「矛盾しない」といえる理由

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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政府は急激な円安を食い止めるため、24年ぶりにドル売り・円買いの為替介入に踏み切った。政府は為替介入、日銀は金融緩和継続という両者であるが、政策の方向性がずれているのではないかという指摘も多くある。果たして本当にそうなのだろうか。日英金利差と為替の関係も踏まえ、金融政策の現状と今後を分析する。

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代宏一

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代宏一

2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。

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24年ぶりにドル売り・円買いの為替介入に踏み切った
(写真:ロイター/アフロ)

懐疑的だった委員も金融緩和継続に賛成、直近の日銀の会合決定

 直近、9月26日に結果が発表された金融政策決定会合では、大方の予想どおり主要な金融政策の現状維持が決定された。

 かつて日銀の大規模金融緩和の持続性に懐疑的な見通しを示したことのあった高田創政策委員会審議委員も賛成票を投じ、全会一致で短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に誘導するイールドカーブコントロールを継続するとした。

 他方、新型コロナ対応金融支援特別オペ、いわゆるコロナオペの段階的終了を決定した。コロナ禍の打撃が和らぐ中、企業の資金繰り環境が改善している現状を踏まえた措置である。

 事前にはコロナオペ終了の決定に伴って、下記フォワードガイダンスが修正されるとの見方もあったが、文言は一切変更されず、政策金利の下方バイアスは維持された。
 当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。
 日銀はいつまで金融緩和を維持し続けるのだろうか。先の政府の為替介入に歩調を合わせ金融引き締めに転じる可能性はあるのだろうか。

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いつまで金融緩和? 政府の為替介入もなお、政策態度は大きく変化しない?
(Photo/Getty Images)

日銀は政府の為替介入に歩調を合わせ、金融引き締めに転じるのか

 筆者はその可能性は低いと考える。もちろん数週間のうちに180円や200円といった超極端な円安水準へと上昇するなら話は別だが、そのような(経済が脆弱な新興国にありがちな)資本流出的な動きにならない限り、現在の金融緩和を維持すると見られる。日銀はかねてより円安抑制を目的に金融引き締めに転じることに距離を置いている。

 仮にもし日銀が日米金利差の拡大観測に歯止めをかけたいと考えているならば、上記フォワードガイダンスを直ちに書き換えているはずであり、9月26日にそれすらもしなかったということは、それだけ緩和継続に対するこだわりが強いということだろう。USD/JPYが150を付けたくらいでは、日銀の政策態度は大きく変化しないと思われる。

 とはいえ、政府は為替介入、日銀は金融緩和継続。政策の方向性がずれているのではないかという指摘もある。しかし、筆者はそれほどおかしな政策だと思わない。

【次ページ】政府と日銀の方向感は食い違っていないといえる理由

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