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  • 2023/08/03 掲載

水素燃料電池自動車(FCV)市場調査:2040年は40万超、主役は「EVが苦手な」あの領域

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低炭素/ゼロカーボンで注目を浴びる水素燃料電池自動車。EV化が難しいと言われる大型車両を脱炭素化できる点に強みがあり、水素燃料電池自動車は商業輸送の部門で有効な選択肢となり得ます。この記事では、世界的な市場調査会社Interact Analysis(インタラクトアナリシス)社の市場調査レポート「市場調査レポート:水素燃料電池自動車とコンポーネントの世界市場(2022年12月):水素燃料電池自動車と、OEM・システムサプライヤーにとっての市場機会(gii.co.jp)」から、水素燃料電池自動車市場の展望と、欧州市場で展開を加速している商用水素燃料電池自動車市場について紹介いたします。

編集協力:グローバルインフォメーション

編集協力:グローバルインフォメーション

世界の主要調査会社250社以上とパートナー契約を結び、日本をはじめとする世界各所で市場調査レポートを提供している。パートナーが発行するレポートは複数産業の約10万点におよび、毎月2000点超の新刊が発行されている。レポートの販売のほか、提携先への委託調査の仲介も実施している。
企業URL:https://www.gii.co.jp/

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図1:水素燃料電池自動車市場はどのような成長曲線を描くのか
(Interact Analysisのレポートより編集部作成、Photo/Shutterstock.com)

2040年までに40万台超、販売“急増”も課題は多い…

 Interact Analysisが発表した最新の調査によると、水素内燃エンジン(H2 ICE)が搭載された車両は2035年までに年22万台販売され、2040年には40万台を超えると予測されています(図1)。現在の市場はまだ発展途上段階にあり、トラックやショベルカー、ローダー、農業機械などのオフロード車の分野では、2030年以降に出荷が急増する見込みです。

 H2 ICE車には、いくつかの特筆すべき利点があります。エンジン技術はディーゼルエンジンとほぼ同じで、既存の知識、設計、生産車両を利用することができます。また、高出力で不純物の多い燃料でも使用でき、汚れやほこりの多い環境下でも作動します。さらに、燃料補給も短時間で行うことができます。

 しかしながら、出荷される車両はごく一部にとどまるでしょう。H2 ICEはニッチ市場を確立しようとしており、ディーゼル車やバッテリー式電気自動車(BEV)の普及レベルには届かないと予測されています。

 世界のほとんどの地域ではまだ水素インフラが整備されておらず、技術に関する認識も不足しており、開発もまだ限定的です。最も重要な課題は、まだ水素燃料のコストが高いことです。競争力を持つ自動車になるためには、大幅なコストダウンが必要です。

 現在の半分のコストでも、H2 ICE車の総所有コスト(Total Cost of Ownership)は他の自動車と比べて高くなります。エンジンのコストはそれほど高くありませんが、タンクのコストは車両価格に大きく影響します。また、水素インフラの整備も必要で、何よりも水素燃料が必要です。

 多くの場合、ディーゼルまたはBEVのほうがH2 ICEよりも安価になります。では、水素エンジンはどのような存在意義があるのでしょうか?

BMWらも参入、水素燃料の「主役はトラック」に

 H2 ICEは、環境および法的な理由からディーゼルからの移行を検討しているが、BEVを容易に導入できない自動車ベンダーをターゲットとしています。大型オフロード車においては、10~100台を販売するためだけにマシンをBEV用に再設計することは、バッテリーやBEV車のベンダーが既存の需要に追いつくのに苦労していることを考えると、実現するには時間がかかるでしょう。一方、H2 ICEではさまざまなタイプのオフロード車両を比較的容易に再設計することができます。

 大型車両ではバッテリーの重量が問題として挙げられますが、おそらくもっと重要なのは、一部のオフロード車両が1日10~15時間稼働するということです。このようなケースでは、バッテリーが持たず、BEV車では根本的に難しいのです。

 こうした背景の中で、Interact Analysisは依然としてトラック用H2の出荷台数がさらに増えると予測しています。これは、トラックの市場規模が非常に大きいため、トラック用水素のシェアが小さくても、車両全体のかなりのシェアを占めることができるためです。

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水素燃料自動車はどのように普及していくのか
(Photo/Shutterstock.com)

 2022年9月、H2 ICEトラックに関するプロジェクトが発表されました。このプロジェクトはHyCET(Hydrogen Combustion Engine Trucks)と呼ばれ、BMWグループを中心に、Deutz、Volvo Trucks、DHL Freight、TotalEnergies、Keyou GmbHが主導しています。Deutz社製エンジンを搭載した18トントラックの開発が計画されており、このプロジェクトではドイツ連邦デジタル・交通省(BMDV)の資金で進められています。

 ただしH2 ICE車両は、少なくとも理論上は最終的にCO2をゼロにすることができますが、NOX排出は依然として存在します。NOX排出量はディーゼルよりも低くなることが期待されており、多くの企業がこれに取り組んでいますが、完全にゼロにすることはできません。これは合理的なトレードオフだという意見もありますが、カリフォルニア州やEUなどの議員にとっては「それで十分なのか」と疑問に感じています。

次のページ以降では、欧州における水素燃料自動車の動向や、水素ステーションの動向などについて解説します
【次ページ】2030年、欧州で導入される水素トラックは何台か

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