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2040年までに40万台超、販売“急増”も課題は多い…
Interact Analysisが発表した最新の調査によると、水素内燃エンジン(H2 ICE)が搭載された車両は2035年までに年22万台販売され、2040年には40万台を超えると予測されています(
図1)。現在の市場はまだ発展途上段階にあり、トラックやショベルカー、ローダー、農業機械などのオフロード車の分野では、2030年以降に出荷が急増する見込みです。
H2 ICE車には、いくつかの特筆すべき利点があります。エンジン技術はディーゼルエンジンとほぼ同じで、既存の知識、設計、生産車両を利用することができます。また、高出力で不純物の多い燃料でも使用でき、汚れやほこりの多い環境下でも作動します。さらに、燃料補給も短時間で行うことができます。
しかしながら、出荷される車両はごく一部にとどまるでしょう。H2 ICEはニッチ市場を確立しようとしており、ディーゼル車やバッテリー式電気自動車(BEV)の普及レベルには届かないと予測されています。
世界のほとんどの地域ではまだ水素インフラが整備されておらず、技術に関する認識も不足しており、開発もまだ限定的です。最も重要な課題は、まだ水素燃料のコストが高いことです。競争力を持つ自動車になるためには、大幅なコストダウンが必要です。
現在の半分のコストでも、H2 ICE車の総所有コスト(Total Cost of Ownership)は他の自動車と比べて高くなります。エンジンのコストはそれほど高くありませんが、タンクのコストは車両価格に大きく影響します。また、水素インフラの整備も必要で、何よりも水素燃料が必要です。
多くの場合、ディーゼルまたはBEVのほうがH2 ICEよりも安価になります。では、水素エンジンはどのような存在意義があるのでしょうか?
BMWらも参入、水素燃料の「主役はトラック」に
H2 ICEは、環境および法的な理由からディーゼルからの移行を検討しているが、BEVを容易に導入できない自動車ベンダーをターゲットとしています。大型オフロード車においては、10~100台を販売するためだけにマシンをBEV用に再設計することは、バッテリーやBEV車のベンダーが既存の需要に追いつくのに苦労していることを考えると、実現するには時間がかかるでしょう。一方、H2 ICEではさまざまなタイプのオフロード車両を比較的容易に再設計することができます。
大型車両ではバッテリーの重量が問題として挙げられますが、おそらくもっと重要なのは、一部のオフロード車両が1日10~15時間稼働するということです。このようなケースでは、バッテリーが持たず、BEV車では根本的に難しいのです。
こうした背景の中で、Interact Analysisは依然としてトラック用H2の出荷台数がさらに増えると予測しています。これは、トラックの市場規模が非常に大きいため、トラック用水素のシェアが小さくても、車両全体のかなりのシェアを占めることができるためです。
2022年9月、H2 ICEトラックに関するプロジェクトが発表されました。このプロジェクトはHyCET(Hydrogen Combustion Engine Trucks)と呼ばれ、BMWグループを中心に、Deutz、Volvo Trucks、DHL Freight、TotalEnergies、Keyou GmbHが主導しています。Deutz社製エンジンを搭載した18トントラックの開発が計画されており、このプロジェクトではドイツ連邦デジタル・交通省(BMDV)の資金で進められています。
ただしH2 ICE車両は、少なくとも理論上は最終的にCO2をゼロにすることができますが、NOX排出は依然として存在します。NOX排出量はディーゼルよりも低くなることが期待されており、多くの企業がこれに取り組んでいますが、完全にゼロにすることはできません。これは合理的なトレードオフだという意見もありますが、カリフォルニア州やEUなどの議員にとっては「それで十分なのか」と疑問に感じています。
次のページ以降では、欧州における水素燃料自動車の動向や、水素ステーションの動向などについて解説します
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