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  • 2023/08/25 掲載

TEIAとは? 日本も取り組む「エネルギー業界のデータ管理標準」の狙い

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エネルギー業界のデータ管理をオープンスタンダード化する動きが進んでいる。2023年6月、日本の国内火力発電最大手のJERA(ジェラ)、ドイツの電力大手 E.ON(エーオン)、オーストラリアの電力大手 オリジン・エナジー、データセキュリティなどを手がける米国のインタートラスト・テクノロジーズがエネルギーマネジメントに関するデータの相互運用を可能にする技術標準のイニシアチブ「TEIA(Trusted Energy Interoperability Alliance)」の設立を発表した。なぜ今このような仕組みが必要とされるのか、TEIAの中心人物であるJERA常務執行役員 サミ・ベンジャマ氏とインタートラストCEOタラル・シャムーン氏に聞いた。

聞き手・執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

聞き手・執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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新たなエネルギー供給網に向けた業界スタンダードとは
(Photo/Shutterstock.com)

エネルギー業界のオープンスタンダードの重要性

──なぜ今、エネルギー業界にデータ管理のオープンスタンダードの構築が必要だと考えられたのでしょうか。

タラル・シャムーン氏(以下、シャムーン氏):エコシステム主導の産業であるエネルギー業界においてオープンスタンダードの利点は、エネルギー事業者が安全かつ一貫して動作するデバイスを従来より低い価格帯で調達する選択の自由を与え、調達の自由を広げられる点です。

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インタートラスト・テクノロジーズ CEO タラル・シャムーン氏
1994~1997年、NECのプリンストン研究所でシグナル・プロセッシング、コンピューターサイエンスの専門家として働く。その後シリコンバレーのインタートラスト・テクノロジーズに研究員として入社、2003年より同社CEOに就任
 現在、エネルギー事業者はデータサービスとデバイスサービスの両方において、技術的な観点でさまざまなベンダーの独自フォーマットに対応しています。複数のデバイスおよびソフトウェアベンダーを採用していますが、エネルギー会社にとって、これらすべての技術を連携させなければならないのは不公平な負担です。

 費やされている金額を考慮すると、エネルギー事業者は自分たちが求めるベンダーを柔軟に選択し、マルチベンダーのプラントをよりスムーズに稼働させられるほうがより効率的であることは明らかです。

 一方で、デバイスメーカー側にもメリットがあります。デバイスとソフトウェアは個別に開発される場合が多く、意図に関係なく、独自のフォーマットを中心に調整されているため、顧客となるエネルギー事業者が自社技術の使用を制限される可能性があります。

 オープンスタンダードにより、メーカーはソフトウェアを単一の技術レシピに基づいて構築することができ、セキュリティと相互運用性が得られます。スタンダードが確立されると、デバイスメーカーの部品サプライヤーはオープンスタンダード技術を満たす部品を低コストで大量生産できるようになります。

 これは、風力タービンやヒートポンプなどの部品代が大幅に安くなることにつながり、利益に貢献することを意味します。


サミ・ベンジャマ氏(以下、ベンジャマ氏):発電設備およびエネルギー機器は、パフォーマンス、安全性、信頼性を重視して構築されています。IoTの出現により、機器メーカーは運用を改善するためにデータの利活用を進めてきました。

 しかし、これまでデータ分析から得られた洞察は顧客や他のメーカーと共有されてきませんでした。現在、従来の設備に加えて風力、太陽光、バッテリーなど電源が多様化しているため、より多くのベンダーが参入しており、顧客はIoTデータの利活用を確立するためにより多くのメーカーと連携しています。

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JERA常務執行役員Glbal CIDO(CIO兼CDO)サミ・ベンジャマ氏
日本大学大学院卒業後、同大学助教授を経てITコンサルタント、大手企業のIT責任者などを経験した後2018年にJERA入社、グローバルCIO(チーフ・インフォメーション・アンド・デジタル・オフィサー)を務める
 オープンスタンダードの導入により顧客はIoTデータを機器から直接連携してデータを可視化し、運用を最適化することもできます。

 クラウドおよびデータ処理に必要なコンピューティング能力のコモディティ化は、ベンダー独自のソースからデータをタイムリーかつ安全に取得するという課題に直面しています。

 しかしメーカーは、他のメーカーと標準化するインセンティブがないため、相互運用性に対するソリューションを提示してきませんでした。こうした問題への解決策として、エコシステムを形成するすべてのプレーヤーの利益にもつながる、TEIAイニシアチブを開始することになりました。 【次ページ】データセキュリティはどう担保? 電力会社のサービスはどう変わる?

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