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  • 2025/06/24 掲載

「エネルギー白書2025年版」見どころ徹底解説、どれが有望?6つの次世代エネ最新事情

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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資源エネルギー庁は2025年6月、エネルギー政策基本法に基づく年次報告である「2025年版エネルギー白書」を公開しました。本白書の発行は今年で22回目となります。本稿では100ページ超におよぶ「2025年版エネルギー白書」の中から、「第1部 エネルギーを巡る状況と主な対策」の、「第2章 グリーントランスフォーメーション(GX)・2050年カーボンニュートラルの実現に向けた日本の取組」「第3章 主要10か国・地域のカーボンニュートラル実現に向けた動向とその背景」の内容を主に取り上げ、解説します。
執筆:アルファコンパス 代表CEO 福本 勲

アルファコンパス 代表CEO 福本 勲

アルファコンパス 代表CEO
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)

 1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。同年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げに携わり、その後、インダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「 DiGiTAL CONVENTiON」の立ち上げ・編集長などをつとめ、2024年に退職。
 2020年にアルファコンパスを設立し、2024年に法人化、企業のデジタル化やマーケティング、プロモーション支援などを行っている。
 主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。2024年6月より現職。

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100ページ超におよぶ「2025年版エネルギー白書」の中から、重要な点を解説します
(Photo/Shutterstock.com)

重要トピック(1):ロシアによるウクライナ侵略の影響

 本白書では、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化、米国トランプ政権のパリ協定からの脱退表明など、ここ数年、エネルギーの安定供給やエネルギー価格に影響を与えるリスクが顕在化し、経済安全保障上の要請が高まっていることが述べられています。

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世界のエネルギーを取り巻く動向
(出典:「2025年版エネルギー白書」(資源エネルギー庁:2025年6月)第121-1-1)

 一方、日本のエネルギー自給率は2023年度時点で15.3%であり、G7の中で最も低い水準になっています。ロシアによるウクライナ侵略以降、LNGの需給ひっ迫や世界的な化石燃料の価格高騰などエネルギー危機が危惧される事態となる中、日本のエネルギー供給体制が脆弱であることが改めて浮き彫りになっています。

 また、一次エネルギー供給で見ると、海外からの輸入に頼る化石エネルギーが8割以上を占めており、この水準はG7各国と比較しても高い水準にあります。

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各国のエネルギー自給率及び一次エネルギー供給・電源構成に占める化石エネルギー比率(2022年)
(出典:「2025年版エネルギー白書」(資源エネルギー庁:2025年6月) 第121-1-2)

重要トピック(2):今後、電力需要が増えていく理由

 世界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)などの進展に伴う電力需要の増加が見込まれています。電力需要の主な変動要因としては、データセンター需要、平均気温の上昇、電気機器の省エネルギー(省エネ)化、EV需要拡大などが挙げられています。

 日本においては、これまで人口減少や節電・省エネ化などにより電力需要は減少傾向にありましたが、今後は、経済成長やデータセンター・半導体工場の新増設などに伴う需要増加により、電力需要が増加に転じると見込まれています。こうした場合においても必要となる脱炭素電源の供給が確保されるように万全の備えを行うことが求められています。

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今後10年の電力需要の想定(左)、データセンター・半導体工場の新増設に伴う最大需要電力(右)
(出典:「2025年版エネルギー白書」(資源エネルギー庁:2025年6月) 第121-2-1)

 日本は、2025年2月に、世界全体での1.5℃目標と整合的で、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた直線的な経路にある野心的な目標として、新たな「日本のNDC(Nationally Determined Contribution:国が決定する貢献)」を、国連気候変動枠組条約事務局に提出しました。新たなNDCでは、2035年度、2040年度において、温室効果ガス(GHG)を2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指すとの目標が掲げられました。

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日本の新たな削減目標(NDC)
(出典:「2025年版エネルギー白書」(資源エネルギー庁:2025年6月) 第121-3-1)

重要トピック(3):日米欧の戦略の違い

 欧米各国を中心に、世界各国では、気候変動対策と産業政策を連動させ、2050年カーボンニュートラル実現に向けた国内外のエネルギー転換を自国の産業競争力強化につなげるための政策を強化しています。

 たとえば、EUは2023年に採択した「グリーンディール産業計画」などにより、EU域内におけるグリーン産業支援を強化しており、2025年2月には、気候変動対策と競争力強化を同時に実現させるための「クリーン産業ディール」を公表しています。

 ドイツなど各国でも新たな投資促進政策により、積極的なグリーン産業への支援が進められています。

 米国でも同様に、2022年8月に成立した「インフレ削減法」による支援を行っています。

 日本においても、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換するGXの取り組みを通じて、エネルギー安定供給・経済成長・脱炭素の同時実現を目指しています。

 2023年2月の「GX実現に向けた基本方針」の策定(閣議決定)以降、10年間で150兆円規模の官民投資を呼び込むため、20兆円規模の先行投資支援策や成長志向型カーボンプライシング構想を順次実施しているほか、2025年2月には、将来の見通しに対する不確実性が高まる中、GXに向けた投資の予見可能性を高めるため、GXの取り組みの中長期的な方向性を官民で共有すべく、「GX2040ビジョン」が閣議決定されました。

重要トピック(4):データセンター立地と再エネ供給の“地理的ギャップ”

 「GX2040ビジョン」では、産業構造の高度化に不可欠なAIなどにも活用されるデータセンターの国内立地を加速するため、効率的な電力・通信インフラの整備を通じた電力と通信の効率的な連携を進めていく「ワット・ビット連携」が打ち出されました。

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