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- 2024/05/13 掲載
OpenUSDとは何かをやさしく解説、なぜ「製造業を変革する」次世代フォーマットなのか
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

OpenUSDとは何か、その設立の経緯
3Dファイルフォーマット「OpenUSD」が、製造業界で大きな注目を集めている。USDとはUniversal Scene Descriptionの略で、もともとは映画製作会社ピクサーが2016年に開発した3Dファイルフォーマットだった。そのデータ構造がユニークで、メタバースの構築にも向いていることが明らかになり、近年は映画産業以外での活用を模索する動きが急速に増加した。
2023年8月にはリナックス財団のグループ傘下の非営利団体JDFの協力のもと、関係各社が新団体「OpenUSD連盟(Alliance for OpenUSD:AOUSD)」を結成し、「OpenUSD」の仕様書を共同作成することで生まれた。
創設メンバーはピクサーのほか、アドビ、アップル、Autodesk、NVIDIA。このアライアンスの目的は、USDが真のオープン標準(OpenUSD)として受け入れられる体制の構築だ。創設以来、さまざまな業界の主要プレイヤーが加盟しており、一般会員には、メタ、イケア、エピックゲームズなどの有名企業が名を連ねる。
対応する開発ツールはMaya、Houdini、Autodesk 3ds Max、Adobe Substance 3D Designerなど。
OpenUSDへの対応発表にあたって、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは「HTMLが2Dインターネットの大規模なコンピューティング革命を引き起こしたのと同じように、OpenUSDはコラボレーティブな3Dおよび産業デジタル化の時代を引き起こす」と絶賛している。
OpenUSDは何がすごいのか? 活用のメリット
USDは、3DCGアニメーション映画の製作でその威力を発揮してきた技術で、3Dシーンを構成するさまざまなデータを、共通のフレームワークで記述・統合できるファイルフォーマットだ。USDを活用する大きなメリットは、既存の3Dフォーマットとは一線を画す拡張性と柔軟性にある。たとえば広く使われているOBJやFBXは、主にジオメトリ情報を含むスタティック(静的)な3Dモデルのためのフォーマットであり、シーンの構造やマテリアル、アニメーションなどのデータを同時に扱うのは難しい。
一方USDは、3Dシーンを「レイヤー化」して記述できるのが強みだ。ジオメトリ、マテリアル、カメラ、ライト、アニメーションなど、3Dシーンを構成するさまざまな要素を独立したレイヤーに分けて定義し、それらの関係性をツリー構造で表現する。これにより、たとえばキャラクターのアニメーションを変更したい場合、アニメーションレイヤーだけを編集すればよく、ジオメトリには一切触れる必要がないとされる。
また、USDではレイヤーの合成方法を柔軟に指定できる。各レイヤーに異なる解像度や詳細度のデータを割り当て、状況に応じて切り替えることで、パフォーマンスを最適化できる。たとえば背景の建物は低ポリゴンのモデルを使い、手前の人物は高精細なモデルを使う、といった使い分けが可能となるのだ。
こうしたUSDの特長は、大規模な3Dシーンを効率的に扱う上で大きなメリットとなる。モデリング、マテリアル、アニメーションなどの作業を並行して進められるほか、変更の反映も容易になる。全体のデータ量が膨大になっても、必要な部分だけを素早く更新できるからだ。 【次ページ】USDがない場合の課題とは
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