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  • 2024/05/13 掲載

OpenUSDとは何かをやさしく解説、なぜ「製造業を変革する」次世代フォーマットなのか

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デジタルツインはじめ、産業用メタバース(インダストリアル・メタバース)への期待が高まる製造業界だが、データのサイロ化や連携の課題など、本格活用には大きな障壁が存在している。この課題を解決すべく注目が集まっているのが、3Dファイルフォーマット「OpenUSD(Universal Scene Description)」だ。本規格を開発したピクサーのほか、NVIDIA、アップル、Autodesk、アドビなどの名だたる企業が同フォーマットへの対応を表明している。ここではOpenUSDの基礎からそのメリット、実際の大手企業の活用事例などをわかりやすく紹介する。
執筆:細谷 元
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ピクサーはじめ、NVIDIAやAutodeskらが「OpenUSD」を普及する団体「AOUSD」を設立した
(出典:NVIDIA報道発表

OpenUSDとは何か、その設立の経緯

 3Dファイルフォーマット「OpenUSD」が、製造業界で大きな注目を集めている。

 USDとはUniversal Scene Descriptionの略で、もともとは映画製作会社ピクサーが2016年に開発した3Dファイルフォーマットだった。そのデータ構造がユニークで、メタバースの構築にも向いていることが明らかになり、近年は映画産業以外での活用を模索する動きが急速に増加した。

 2023年8月にはリナックス財団のグループ傘下の非営利団体JDFの協力のもと、関係各社が新団体「OpenUSD連盟(Alliance for OpenUSD:AOUSD)」を結成し、「OpenUSD」の仕様書を共同作成することで生まれた。

 創設メンバーはピクサーのほか、アドビ、アップル、Autodesk、NVIDIA。このアライアンスの目的は、USDが真のオープン標準(OpenUSD)として受け入れられる体制の構築だ。創設以来、さまざまな業界の主要プレイヤーが加盟しており、一般会員には、メタ、イケア、エピックゲームズなどの有名企業が名を連ねる。

 対応する開発ツールはMaya、Houdini、Autodesk 3ds Max、Adobe Substance 3D Designerなど。

 OpenUSDへの対応発表にあたって、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは「HTMLが2Dインターネットの大規模なコンピューティング革命を引き起こしたのと同じように、OpenUSDはコラボレーティブな3Dおよび産業デジタル化の時代を引き起こす」と絶賛している

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「USD」はPixarが2016年に開発した3Dファイルフォーマットだ
(Photo/Shutterstock.com)

OpenUSDは何がすごいのか? 活用のメリット

 USDは、3DCGアニメーション映画の製作でその威力を発揮してきた技術で、3Dシーンを構成するさまざまなデータを、共通のフレームワークで記述・統合できるファイルフォーマットだ。

 USDを活用する大きなメリットは、既存の3Dフォーマットとは一線を画す拡張性と柔軟性にある。たとえば広く使われているOBJやFBXは、主にジオメトリ情報を含むスタティック(静的)な3Dモデルのためのフォーマットであり、シーンの構造やマテリアル、アニメーションなどのデータを同時に扱うのは難しい。

 一方USDは、3Dシーンを「レイヤー化」して記述できるのが強みだ。ジオメトリ、マテリアル、カメラ、ライト、アニメーションなど、3Dシーンを構成するさまざまな要素を独立したレイヤーに分けて定義し、それらの関係性をツリー構造で表現する。これにより、たとえばキャラクターのアニメーションを変更したい場合、アニメーションレイヤーだけを編集すればよく、ジオメトリには一切触れる必要がないとされる。

 また、USDではレイヤーの合成方法を柔軟に指定できる。各レイヤーに異なる解像度や詳細度のデータを割り当て、状況に応じて切り替えることで、パフォーマンスを最適化できる。たとえば背景の建物は低ポリゴンのモデルを使い、手前の人物は高精細なモデルを使う、といった使い分けが可能となるのだ。

 こうしたUSDの特長は、大規模な3Dシーンを効率的に扱う上で大きなメリットとなる。モデリング、マテリアル、アニメーションなどの作業を並行して進められるほか、変更の反映も容易になる。全体のデータ量が膨大になっても、必要な部分だけを素早く更新できるからだ。 【次ページ】USDがない場合の課題とは

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