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- 2024/07/10 掲載
日本のライバルはいよいよ「マレーシア」に、NVIDIAやMS・グーグルが大型投資のワケ
AI関連で加熱するマレーシア投資、NVIDIAが先鞭
2023年12月、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOがマレーシアを訪問した際、同国が「AIの製造ハブ」になる可能性があると言及した。また同社によるマレーシア投資に関する一連の報道も手伝い、AIをめぐって、マレーシアに対する注目度が一気に高まった。ロイター通信(2023年12月8日)は、NVIDIAがマレーシアでのAIインフラ構築プロジェクトにおいて、現地大手複合企業のYTLと提携交渉を行っており、その累計投資額は43億ドルに上ると報道。プロジェクトではYTLが保有するマレーシア南部のデータセンターにおいて、NVIDIAのAIチップを活用した「マレーシア最速のスーパーコンピューター」の構築や、NVIDIAのAIクラウドを活用したマレー語特化の大規模言語モデル開発などが計画されている。
フアンCEOは「マレーシアはコンピューティングインフラに必要な土地、設備、電力を有する。東南アジアにおける重要なハブとなる」と述べ、同国のAI領域におけるポテンシャルを高く評価。マレーシアのアンワル首相もNVIDIAとYTLの提携について言及し、投資規模は200億リンギット(約43億ドル)に上ることを明らかにしている。
マイクロソフトも過去最大のAI投資
マイクロソフトは2024年5月2日、今後4年間で22億ドルをマレーシアのデジタルトランスフォーメーション支援に投資すると発表した。同社はマレーシアで32年間にわたり事業を行ってきたが、過去最大の投資額になる。
投資内容は、AIとクラウドのインフラ構築、国内で最大20万人に対するAIトレーニングの提供、国立のAIセンター・オブ・エクセレンスの設立などが含まれる。マレーシア政府との連携により、サイバーセキュリティ基準の向上にも取り組む。
また同社は、2025年までに東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国で250万人にAIスキルトレーニングを提供することも明らかにした。マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムの政府や非営利団体、企業、コミュニティと提携し、研修やサポートを実施する計画という。マレーシアでは20万人がこの恩恵を受けると見込まれている。
さらにマイクロソフトは、主要産業におけるAI導入の推進や公共部門でのAIプロジェクトの実施に加え、サイバーセキュリティ戦略の策定などで、マレーシア政府との連携を強化する方針だ。
具体的には、投資貿易省と協力し貿易交渉の経済分析や、科学技術革新省傘下機関とのスタートアップ支援プラットフォームの構築、サイバーセキュリティ機関とのセキュリティ評価や能力開発などを進める。
さらに、マレーシアの開発者コミュニティの成長支援にも力を入れる。「AI Odyssey」と呼ばれる新たな取り組みを通じ、2000人のマレーシア人開発者に、AI専門家になるためのスキル習得支援を提供する。マイクロソフトが所有する開発プラットフォーム「GitHub」におけるマレーシアのユーザー数は、2023年に前年比28%増の68万人に達した。
マイクロソフトASEANのアンドレア・デラ・マッテア代表は、「マレーシア政府との連携を通じ、同国の国家AI戦略を支援できることを光栄に思う。AIへの戦略的な注力は、経済成長を後押しするだけでなく、デジタル格差の解消とインクルージョンの促進にもつながる。マレーシアは着実に、域内のデジタルイノベーションとスマートテクノロジーのハブとしての地位を確立しつつある」と同国の可能性を評価している。
東南アジア各国でクラウド・AI投資を拡大するマイクロソフトだが、マレーシアにおける22億ドルの投資額は、インドネシア(17億ドル)とタイでの投資規模を上回る見込みだ。 【次ページ】グーグルもマレーシアで過去最大規模の投資へ
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