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- 2025/09/18 掲載
なぜOpenAIはAMDを選んだのか?49億ドル買収で挑むNVIDIA「独占」の高すぎる壁
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/
OpenAI サム・アルトマンCEOが採用を明言、AMDへの期待
NVIDIAの独占状態が続くAI半導体市場で、2番手AMDの攻勢が本格化している。AMDがカリフォルニア州サンノゼで開催した発表イベント「Advancing AI 2025」で、同社CEOリサ・スー氏が次世代AI半導体「Instinct MI400シリーズ」を発表。さらにOpenAIのサム・アルトマンCEOが舞台上で同社製品の採用を明言したことが大きな話題となっている。この発表の意味は極めて大きい。OpenAIはこれまで、同社モデルの訓練にNVIDIA A100/H100 GPUを使用するなど、NVIDIAに大きく依存してきた。それが今回、AMDの最新半導体MI450の採用を表明し、さらにその設計にも関与していることが明らかになった。アルトマン氏は「来年のコンピュート増強は『クレイジー』なレベルになる」と述べ、MI450 GPUの大規模展開も示唆している。
注目すべきは、OpenAIがAMD半導体の設計段階から深く関与している点だ。AMD幹部によれば、OpenAIのフィードバックがMI450のアーキテクチャ形成に貢献したという。メモリ設計から数千個のGPUにわたるスケーリングまで、大規模モデルの訓練ニーズに合わせた最適化が施されている。これは単なるハードウェア購入を超えた戦略的パートナーシップといえるだろう。
AMDの勢いは、OpenAIとの提携にとどまらない。同イベントでは、イーロン・マスク氏のAIスタートアップxAI、メタ、オラクルなどの幹部が登壇し、Instinctアクセラレータの活用について議論を展開。またクラウドプロバイダーのCrusoeが、AMDの新型半導体MI355Xを4億ドル分購入する計画を発表するなど、具体的な導入事例も増加している。
AMDは現在、世界トップ10のAIモデル構築企業のうち7社(メタ、マイクロソフト、OpenAI、xAIを含む)が、Instinct GPUで本番ワークロードを実行していると主張。マイクロソフトAzureは2024年5月、AMDのMI300Xアクセラレータを搭載したクラウドインスタンス(VMあたり8GPU)を導入し、Azure OpenAIやHugging Faceなどの顧客が大規模モデルをAMDハードウェア上で実行できる環境を整備した。
AMDの戦略の核心は、オープンエコシステムへのコミットメントにある。オープンソースのROCmソフトウェアと業界標準のインターコネクトを採用し、NVIDIAのクローズドなCUDA/NVLinkアプローチに対抗。この「オープン」戦略が、多くの企業を引き付ける要因となっている。 【次ページ】M&A戦略でギャップ埋めるAMDの思惑
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