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  • 2024/03/15 掲載

なぜマレーシアが「AI製造の中心地」になるのか?NVIDIA ジェンスン・フアンCEOの狙い

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時価総額でグーグルとアマゾンを超えたNVIDIA。マグニフィセント7の一角として、世界中が同社の投資動向に高い関心を寄せている。直近の同社の大型投資となるのがマレーシア投資だ。2023年12月、マレーシアを訪れたNVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、同国がAI領域の製造ハブになる可能性があると指摘、同国の複合大手と提携し、スーパーコンピューターの構築や大規模言語モデルの開発を進める計画があるとも報じられている。半導体やAI領域でなぜマレーシアが注目されているのか、その理由を探ってみたい。

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

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なぜフアンCEOはマレーシアに大規模な投資をするのか
(Photo:jamesonwu1972 / Shutterstock.com)

フアンCEO、マレーシアのポテンシャルを高く評価

 時価総額でグーグルとアマゾンを超えたNVIDIA。同社の開発/投資動向への関心度合いは一層高くなっている。

 NVIDIAに関する最近の注目トピックの1つとなるのがマレーシア投資の拡大だろう。

 2023年12月、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOはマレーシアを訪問した際、同国がAI領域における「製造ハブ」になる可能性があると発言。これがマレーシアにおける投資拡大を示唆するものであるとし、多くのメディアの注目を集めた。

 これに関してロイターは12月8日、NVIDIAがマレーシアでのAIインフラ構築プロジェクトにおいて地元複合大手YTLとの提携交渉を行っているとし、同プロジェクトの累計投資額は43億ドルに上ると報じた

 プロジェクトでは、スーパーコンピューターとクラウドコンピューティングを含むAIインフラをYTLが保有するマレーシア南部のジョホール州のデータセンターにホストするというもの。YTLによると、第1フェーズは2024年半ばまでに完了し、オペレーションを開始する予定という。

 YTLは1955年にマレーシアで創業されたインフラ事業を中核とする老舗企業。ユーティリティ(電気・ガス・水道)のほか、高速鉄道、セメント、建設、不動産、ホテル、リゾートなども手掛ける複合企業だ。データセンターやデジタルバンキングなど、デジタルテクノロジー関連の事業も行っており、NVIDIAとの提携によって、デジタル領域における存在感をさらに強める格好となる。

 ちなみに、YTLは北海道ニセコでのリゾート事業を行うほか、東京証券取引所に上場しており、日本と強いつながりを持つ企業でもある。

 NVIDIAとの提携プロジェクトで実働するのは、YTLの子会社YTL Power International。YTL Powerは同プロジェクトの計画に関して、NVIDIAのAIチップを活用し、マレーシアで最速のスーパーコンピューターを構築するほか、NVIDIAのAIクラウドコンピューティングを活用し、マレー語に特化した大規模言語モデルの開発を計画していることを明らかにした。

 フアンCEOは「マレーシアはコンピューティングインフラに必要となる土地、設備、電力を有する国で、東南アジアにおける重要なハブとなる。YTLは重要な役割を果たすだろう」と述べており、同国のAI領域におけるポテンシャルを高く評価している。

 マレーシアのアンワル・イブラヒム首相もNVIDIAとYTLの提携に関してX(旧ツイッター)で言及、投資規模は200億リンギット(約43億ドル)に上ることを明らかにした。

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マレーシアのアンワル・イブラヒム首相もNVIDIAの投資に言及した
(Photo:Alif Omar / Shutterstock.com)

マレーシアの半導体製造基盤を構築したインテル

 マレーシアの人口は3400万人ほど。IMFの推計によると、同国の名目GDPは4,655億ドル、1人あたりGDPは1万3,000ドルを超える。1人あたりGDPは東南アジア諸国連合(ASEAN)の中では、9万1,000ドルのシンガポール、3万5,000ドルのブルネイに次ぐ3番目。

 マレーシアは、日本の自動車産業の技術を吸収し自国メーカーを生み出すなど、ASEANの中でも高い製造技術を持つ国。この技術力は半導体分野にも生かされており、現在半導体市場におけるグローバルサプライチェーンの中でも重要な存在となっている。

 同国の半導体分野における基礎を構築したのはインテルだ。

 インテルは1972年に同社初となるアッセンブリーと試験のオフショア拠点をマレーシア・ペナン島に開設。その後ペナン島の対岸に位置するクリム地区にも拠点を拡大するなど、半世紀以上にわたり投資を行ってきた。これまでの累計投資額は50億ドルに上るが、今後10年投資の勢いはさらに加速する見込みだ。

 インテルは2021年、今後10年にわたり70億ドルをマレーシアに投じ、半導体分野の製造能力をアップグレードする計画を明らかにした。半導体のアドバンスドパッケージング施設や3Dチップパッケージング施設を開設する計画という。

 インテル以外にもさまざまな半導体企業の投資が集まり、マレーシア経済に占める半導体のウェイトは非常に大きなものとなっている。

 ASEAN Briefing(2024年1月26日)によると、マレーシアの半導体産業の同国GDPに対する寄与率は25%に上り、半導体のパッケージング、アッセンブリー、試験サービスにおいてはグローバルシェアの13%を占める。また半導体輸出では世界6番目の規模に達する。

 1990年代に入り、韓国のサムスン、台湾のTSMCの台頭により、半導体市場におけるマレーシアの存在感は薄れたとされるが、昨今の米中貿易摩擦の激化に伴い、マレーシアへの注目度が再び高まりを見せている。 【次ページ】NVIDIAとAMDの部品供給企業がマレーシアに拠点

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