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- 2024/07/19 掲載
「空前の人手不足」米国の製造業で「Made in USA」がすでに本格化している根因
加速するリショアリング/ニアショアリングの動き
パンデミックを機に加速した世界的なサプライチェーン再編に伴い、米国ではリショアリング/ニアショアリングの動きが顕著となっている。リショアリングとは製造や生産プロセスを自国に戻すこと、ニアショアリングは製造拠点を近隣または隣接する国に移転することを指す。
グローバルコンサルティング企業Kearneyが発表した最新のリショアリング指数レポートによると、2023年のアジア低コスト14カ国・地域(LCCRs)からの米国への輸入額は、8,780億ドルと、2022年の1兆220億ドルから、1,430億ドルもの大幅下落を記録した。
中国本土からの輸入が20%(1,050億ドル)下落したことが最大要因となるが、ベトナムとマレーシアも米国への輸出がそれぞれ約10%と16%縮小した。インド、タイ、台湾はダメージを最小限に抑え、米国への輸出はほぼ横ばいだった。
アジアの低コスト国からの米国への輸入が減少する中、存在感を高めているのが、米国の近隣国カナダとメキシコだ。
カナダからの総輸入額は過去3年間着実に増加。2023年、カナダは輸入カテゴリーの半分で対米輸出が拡大、最大の増加は輸送機器で30%の伸びを示した。
メキシコは2013年に最初のリショアリング指数が計測されて以来、初めて中国本土を上回り、現在は米国最大の輸出国となっている。パンデミック時期と比較すると、メキシコ製造品の米国輸入は3,200億ドルから4,220億ドルと、実に32%も増加している。
リショアリングやニアショアリングを検討する理由の1つに、地政学リスクの高まりがある。中国のほか一部のアジア諸国との貿易には、権威主義的統治、自国企業の優遇、台湾侵攻の可能性、国際的な制裁を受けやすいなどのリスクがつきまとう。
一方、カナダやメキシコは地理的に米国に近く、貿易関係も安定し、地政学的リスクは相対的に低いため、ニアショアリングの対象として注目度が高まっているのだ。
中国からの輸入は大幅下落
Kearneyの分析をさらに詳細に見ていきたい。米国の製造輸入全体に占めるアジア低コスト14カ国・地域の割合は、2023年に12.14%となった。この割合がピークを迎えたのは14.49%を記録した2021年。2022年は14.1%を維持したが、2023年は前年比14%減と、過去最大の下落となった。
アジア低コスト国からの輸入減少は、米国の総輸入額が2022年の2兆7,860億ドルから2023年の2兆6,730億ドルへと1,130億ドル減少したことと一致している。
アジア低コスト14カ国・地域とは、中国、ベトナム、インド、フィリピン、マレーシア、インドネシア、パキスタン、スリランカ、台湾、タイ、バングラデシュ、シンガポール、香港、カンボジアのことを指す。
同レポートでは、アジア低コスト14カ国・地域に占める中国の比率減少が加速している点も指摘されている。2014年第4四半期、アジア低コスト14カ国・地域に占める中国の割合は69%と非常に大きなものだった。
しかし、それ以降、減少傾向が続き、2023年第4四半期には46%と過去最低を記録したのだ。
またKearneyは、中国の比率が減少していることに加え、絶対額で測定した中国本土からの輸入が、2013年とパンデミックがあった2020年の水準を下回ったと指摘。構造的に大きな変化が示唆される分析結果となっている。 【次ページ】リショアリング・ニアショアリングの事例
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