- 2025/07/07 掲載
致死量「約4億回分」押収も…ヤバすぎるフェンタニル「密輸見逃しの日本」に制裁は?
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
フェンタニルで「なんと7万人超」が死亡した年も…
米疾病対策予防センター(CDC)の統計によれば、米国では2022年に10万7941人、2023年に10万5007人、2024年には8万391人が薬物過剰摂取で死亡している。そのうち、オピオイド(注1)の一種であるフェンタニル(注2)は、2022年に7万6226人、2023年に7万4702人の命を奪っている。2024年は取り締まりの強化で大きく減少し、4万8422人だった。だがその数は自動車事故による死亡者数(2023年は約4万人)や、銃による死亡者数(2021年は約4万8000人)よりも多い。依然として15~24歳の将来ある若年層で、死因の第1位を占めている。また、図1のようにピーク時には毎月6000人以上がフェンタニルで亡くなっていた。
これは日換算で200人以上である。これだけの規模で、毎日、若い人を中心にどんどん合成麻薬で死亡し続けることの社会的なインパクトはあまりにも大きい。
そのため、フェンタニル撲滅は2024年の米大統領選では争点の1つとなった。第2次トランプ政権では、「違法薬物の流通に関与している」とトランプ大統領が主張する中国・メキシコ・カナダへの関税引き上げの根拠とした。
以上のことから、日本が中国の犯罪組織によってフェンタニル原材料の中継基地とされたことの、政治的な重要性がおわかりになるだろう。この観点については、後ほど詳しく解説する。
【次ページ】致死量「約4億回分」押収…ここまで蔓延したワケ
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