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- 2025/05/31 掲載
16年連続で増収増益、間接資材通販で「時間資源」を提供する「モノタロウ」の物流
フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。
間接資材在庫で「顧客の時間資源」を提供するモノタロウ
ものづくりにおいて必要なものは製品の原材料だけではない。製造のための資材、メンテナンスのための資材なども必要となる。それらが、「モノタロウ」が販売している「間接資材」である。2000年に住友商事と米国グレンジャー社の出資により「住商グレンジャー」を創業したのはプロ経営者として知られる瀬戸 欣哉氏(現在はLIXILグループ 取締役 代表執行役社長 兼 CEO)だ。2006年にMonotaROに社名変更された。
一般に、製造業の事業者が購入する資材の金額は約8割が直接資材、そして間接資材が全体の2割と言われている。間接資材1つひとつの金額は大きくない。だが品目が多い。なにしろ作業のための各種道具や消耗品だけではなく、会社を維持するための基本的な事務用品やオフィス家具その他も全て間接資材なのである。
それらすべてを探索するのも適正価格で取引するのも手間となっている。要するに「時間資源」がそこに投入されているわけだ。それらをひとまとめで引き受けようというのがモノタロウの狙いだ。なお間接資材調達市場の規模は5~10兆円と言われているという。

同社の企業理念は「資材調達ネットワークを変革する」。資材調達にかける時間コストを削減し、本業にかけるリソースを生み出す。そのために具体的には多種多様な間接資材の価格交渉・見積もり・発注・納期確定・発送などの一連の手間や時間を短縮する。これがモノタロウのビジネスだ。社員数は現在約3500名。
元々はネット販売サイト名だった「MonotaRO」という社名には3つの由来がある。1つ目は間接資材を意味する「MRO(Maintenance/保守、Repair/修繕、Operation/操業)」販売。2つ目は「モノが足りる」。3つ目は「流通の鬼退治」だ。間接資材流通における不透明、非効率といった問題を解決するという意味である。
モノタロウの特徴は、自社で間接資材の在庫を持って、オンラインで直接販売していることと、コールセンターや物流、業務システムなどを自社開発して運用していること。自らを「フルスタックECカンパニー」と位置付けている。
2025年3月末時点で扱っている商品点数は約2420万点以上。ユーザー数は1042万人以上。連結売上は2024年度実績で約2,881億円。前年比で+13.3%。取扱点数を拡大することで顧客数を拡大し、さらに新規顧客と周辺商品の在庫点数を拡大、売上と利益を拡大するというサイクルを回している。近年はプライベートブランド化も進めている。この事業成長サイクルを回すことで、同社は売上高・営業利益ともに16年連続で増収増益となっている。
「間接資材の調達プロセスを圧倒的に簡単にする」。そして顧客に「時間資源」を提供する。これが同社の提供価値だという。
モノタロウの物流ネットワーク
モノタロウは自社物流拠点を2025年5月現在で3つ持っている。今回公開された笠間DC、兵庫の猪名川DC、そして茨城の茨城中央SC(サテライトセンター)である。そして2028年稼働を目指す水戸DCが今回着工となった。2017年に稼働開始した笠間DCは東日本エリアを中心とした在庫を保有する配送センターで、平屋建て、延床面積約5万6000平方メートルの倉庫だ。在庫保有能力は約33万点。出荷能力は10万行/日。なお「行」とは物流業界用語で、納品明細の1行に書かれている品目のことを指す管理指標である。同じ商品であっても明細が別であれば別の行になる。要するに明細数であり、倉庫でのピッキング作業数に近い。
笠間DCでは、在庫商品に関しては17時までに注文されれば当日中に出荷される。一方、茨城中央SCは主に、大量に出る売れ筋商品やプライベートブランドの出荷を担っており、笠間DCを補完する役割を担っている。
茨城県常陸那珂港区に荷揚げされた海外からの商品もコンテナ輸送されて、茨城中央SCでデバンニングされて、保管される。デバンニングは主に人手。笠間DCで保有されているものが減ってきたら茨城中央から倉庫間輸送して補填していくというかたちで運用されている。稼働時間は日中。
【次ページ】330台のAGVが棚を運ぶ笠間DC
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