- 2025/12/19 掲載
「さすがトヨタ…」EV減速は誤算ではない──流されなかったトヨタの判断力
EV減速はなぜ「想定外」に見えたのか
EV失速が話題になることが増えているものの、実は市場が明確に失速したわけではない。ただし、成長の質が変化している。実際、国際エネルギー機関(IEA)によると、直近の確定データである2024年の世界EV販売台数は約1400万台と、前年比で約35%も増加した。さらに、2025年も販売台数は増加する見通しだ。ブルームバーグNEFは、2025年の世界EV販売台数が約2200万台と、前年比で約25%増になると予測している。IEAも、2025年のEV販売が2000万台を超えるとの見方を示している。
つまり、EV市場全体は拡大を続けている。ただし、その成長は地域によって大きく異なる。欧州では成長率が一桁台に落ち込み、米国でも伸びは鈍化している一方、中国が増加分の大半を占める構図だ。
欧州最大市場のドイツでは、購入補助金「環境ボーナス」が2023年12月に終了し、2024年のEV新車登録台数は前年比約11%減少した。米国では、連邦政府のEV充電網整備プログラム(NEVI)の立ち上がりが遅れ、当初計画と比べ進捗は限定的だった。
中国では販売台数は拡大を続けているが、激しい価格競争によって収益性の悪化が顕在化している。ロイターによれば、中国の市場監督当局は、EVを中心とする自動車分野で原価割れを含む過度な値下げ競争がメーカーやサプライヤー、販売店まで含めた産業全体の利益を圧迫しているとして、価格戦争を是正するための規制案を打ち出した。
こうした兆候は以前から存在していた。それでも当初は、EVが不可逆的に拡大するとの見方が支配的で、地域差や収益性の問題は過小評価されていた。このねじれが、減速を「想定外」に見せた最大の要因だった。
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