- 2026/02/26 掲載
「過労死白書」が示した、建設業の悲痛……繁忙期の“3大リスク”と現場を守る4改革
社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表。Hamar合同会社代表社員。法学部出身でありながら、市役所の先輩や土木施工管理技士である父親の影響を受け、土木技術の凄さに興味を持ち、研鑽を積む。そして、市役所勤務時代には公共工事の監督員として、道路築造工事や造成工事などの設計・施工を担当した実績を持つ。
現在は、「建設業の現場を経験した」社会保険労務士・行政書士として、建設業の労務管理・建設業許可・入札関係業務を主軸に、建設業の働き方改革・安全衛生コンサルティングを始めとした「現場支援」業務を行ってる。また、商工会主催の「建設業の働き方改革セミナー」を開催し、働き方改革に関する多くの相談を建設業者などから受けている。
著書に 最新労働基準法対応版 建設業働き方改革即効対策マニュアル、図解即戦 建設業法の規制と対応がこれ1冊でしっかりわかる本がある。そのほか、中小企業の建設業の経営者に向けた YouTubeチャンネルを開設し、建設業界に関係する最新の知識やお役立ち情報などを日々発信している。
過労死防止白書で浮かび上がった「働き方改革の代償」
2024年4月、建設業にも時間外労働の上限規制が本格適用され、「働き方改革」の大きな節目を迎えました。実際、工事の発注者が官民を問わず、週休2日制を導入する現場も着実に増え、制度面では大きな前進が見られます。しかしその一方で、現場で働く技術者や管理職層からは、「負担が減った実感がない」「むしろ精神的なプレッシャーが増えた」という声が根強く聞こえてきます。働きやすい職場環境の整備に向けた取り組みが、むしろ心身へのストレスを高めた可能性があるのです。
たとえば2025年版「過労死等防止対策白書」を見ると、精神障害や脳・心臓疾患に関する労災請求件数は、全産業平均と比べて建設業が依然として高水準にあります。
注目すべきは、データからも明確な改善傾向が見られない点です。
自殺(未遂を含む)以外の精神障害に関する労災請求件数は、働き方改革関連法の施行を見据えた令和元年度(平成31年度)から令和5年度までの猶予期間において、減少するどころか、むしろ増加傾向を示しました。令和6年度には一時的に件数が減少しているものの、依然として猶予期間前を上回る水準にあります。
建設業は「自殺」が深刻……過労死白書が示した衝撃の事実
ここで、精神障害の中でも特に深刻なケースである「自殺(未遂を含む)」に着目すると驚くべき事実が浮かび上がりました。まず、「自殺(未遂を含む)」の精神障害に関する労災請求件数を見てみると、年ごとの増減はあるものの明確な減少トレンドには入っていません。令和6年度の件数も、過去と同程度の水準にとどまっており、「改善に転じた」と評価するのは難しい状況です。
さらに、これを雇用者100万人あたりの件数で見ると、建設業は全産業で最も多い「8.6件」に達しています。これは、建設業では働く人数に対して、精神障害に関する労災請求が特に多く、現場で働く1人ひとりが背負う精神的な負担が他産業よりも重いことを意味します。
このように、働き方改革の制度面では一定の前進が見られるものの、データを踏まえる限り、建設現場における過労死リスクが確実に低下したとは言えません。むしろ、精神的な負荷が軽減されないまま、現場に蓄積され続けている実態が浮かび上がっています。
では、なぜこれだけの制度整備や準備期間がありながら、現場の過酷さは解消されなかったのでしょうか。その原因は、現場の頑張り不足でも、個々の意識の問題でもありません。建設業界に長年積み重なってきた「構造」そのものにあります。 【次ページ】なぜ建設業だけ変われない? 改革を阻む「三重の壁」
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