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- 2026/01/28 掲載
あなたの口座を犯罪に利用?警察庁が警告「口座売買」「送金バイト」最新事情と対応策
元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」
銀行口座の違法売買は増加傾向に
まず大前提として、「違法な口座売買」と言っても、法律に沿った良い売買と違法な売買があるわけではありません。預金口座を売買したり、譲渡したりすること自体が基本的にNGです。仮に売買に手を染めると、逮捕などの刑事罰や口座開設の制限、そして多額の損害賠償請求という極めて重大なペナルティーやリスクを負うことになります。
法律で禁止されているにも関わらず、口座売買は近年増加傾向にあります。全国銀行協会の調査によると、口座不正利用に伴う口座の利用停止・強制解約などは、2021年から2024年にかけて約2.3倍に増えました。
なぜ、こんなに増えているのでしょうか。背景には、預金口座の「単価アップ」という現実があるようです。
2011~2012年と2024年を比較すると、口座の売買価格の平均値は約1万円上昇。最大値では差がさらに広がり、2011~2012年が7万円のところ2024年では50万円にもなっています。軽い気持ちで目先の見返りを狙い、取り返しのつかない責任を負う危険性が高まっていると言えます。
また、口座の売買・譲渡を伴わない「送金バイト」の横行も深刻です。口座に振り込まれた現金を他人に送金する仕事として紹介され、他の口座(犯罪利用口座)への送金を行う事例が後を絶ちません。警察庁の公表資料によると、主にSNSなどの非対面形式を通じて募集が行われ、報酬を受け取るケースが大半と言います。
2025年には国内最大規模の「口座ブローカー」とされる男女7人が逮捕されたというニュースが注目を集めました。複数の特殊詐欺グループに計948件の預金口座・暗号資産口座を売却したと見られており、口座売買に絡む犯収法違反の容疑に問われています。その手口は、SNSなどで「闇バイト」として名義人を募集し、口座を1件当たり3万~30万円で買い取り、特殊詐欺グループに20万~75万円で転売するというものだったとされています。
男らが口座を売却した特殊詐欺グループによる被害額は、約11億4,000万円相当に上ると報じられています。預金口座を売る行為は、一見すると直接的な被害者がいないように思えてしまうかもしれませんが、結果的には口座売買が絡む犯罪によって多額の被害が出ているのです。
国民を詐欺から守るための総合対策2.0の中身は?
違法売買の横行を問題視した全国銀行協会は、「使っていない口座は早めに解約する」「紛失した預金通帳・キャッシュカードは早めに手続きを取る」といった行動を銀行の利用者に呼び掛け、「簡単に収入が得られる」といった怪しい取引には絶対に乗らないよう注意喚起しています。政府は2025年、「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」を取りまとめました。
警察庁と金融庁はこれまでも口座不正利用対策の強化、凍結依頼口座の共有などを連携して進めてきましたが、詐欺の手口はますます複雑かつ巧妙になっているため、新たな取り組みを追加して従来の総合対策を改定し、政府を挙げた詐欺などに対する取り組みを抜本的に強化するとしています。
たとえば犯行の準備段階の対策として、「携帯電話契約時における本人確認を強化する」「空き家の不正利用を防止する」など、携帯電話事業者や不動産事業者との協力を掲げています。
2025年末には警察庁の有識者会議が「金融サービスを悪用したマネー・ローンダリングへの対策に関する報告書」を策定。「総合対策2.0」を土台としつつ、罰則の強化・新設や、被害回復のスキームの具体策をより明確化した内容となっています。 【次ページ】金融機関にはどのような対応が求められる?
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